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介護事業者こそスタッフの「介護」と「仕事」の両立を考えよう

17.05.02 |

高齢化社会の大きな問題の一つとして、「介護」と「仕事」の両立が挙げられます。総務省の調査では、毎年約10万人以上の労働者が家族の介護・看護を理由として離職しており、社会問題化しています。 

これは介護事業者の労働者にとっても例外ではなく、深刻な影を落としています。 

政府はこの問題に対応すべく、平成28年4月1日に国会に提出された「2015年度補正予算案の概要」の中の「1億総活躍社会」の3本柱の一つとして「介護離職ゼロ」を掲げました。この「介護離職ゼロ」を実現するためのキーポイントが「介護休業制度」の取得率UPです。介護業界でも重要課題の一つと言えるでしょう。 

■介護離職者をゼロにするため各種休業制度が緩和の方向へ 
介護事業者にとっては、今後、利用者へのサービス体制の確立とともに、自社の介護離職者をゼロにする取り組みが必要となります。特に小規模事業者は限られた人数で、一定以上の介護サービスが求められるため、スタッフの負担が増えることになります。そのため、スタッフは仕事と親族の介護との両立が厳しくなるでしょう。 

介護離職を防ぐために、法律に基づいて、労働者が親族を介護するために休業を取得できる制度として「介護休業制度」が設けられています。しかし、その認知度は非常に低いです。以前の調査では介護休業の取得率は3%程度にとどまっており、ほとんど機能していない状況と言えます。 

今までの介護休業法は、介護を必要とする家族1人につき最大で93日の介護休業が取れました。しかし、取得回数は1回のみでした。労働者がまとめて約3ヵ月の休業を取ることに難色を示す企業が多かったと思われます。 

平成29年1月1日に施行された改正介護休業法では、最大日数の93日は変わりませんが、3回までの分割取得が可能となりました。その他にも介護労働者の「時間外労働を制限する制度」が導入されたり、通院や買い物の付き添いや介護等を行うために年間5日まで「介護休暇」を取得することもできるようになりました。働きながら介護を行う労働者に対し、企業側も雇用を守るために最大限の配慮を施すことが求められています。 

また、介護休業の対象者を増やすために要件が緩和されました。これまでは介護対象者が「要介護認定2」から「要介護認定3」程度にならなければ介護休業を取れませんでした。しかし、平成29年1月1日の改正後は「要介護認定1」以下でも一定の介助が必要であれば、介護休業を取れるようになりました。 


■「総合事業」への移行と「自己負担率の引き上げ」が向かい風 
ただし、「介護離職ゼロ」を妨げる問題点も、介護業界から出ています。それが、2017年4月から開始した「総合事業」への移行と2018年8月から予定されている「自己負担率の引き上げ」です。自己負担割合が上がると、同じ金額で受けられる介護サービスの水準が低下することになり、家族の負担が増える可能性が出てきます。 

また「総合事業」は、介護サービスを自治体主体で行うことにより、高齢者が住み慣れた町で介護を受けることができるようになります。一方、地域包括ケアシステムの構築は各自治体に委ねられており、地域でのサービス格差が懸念されています。地域包括ケアシステムが整備されていない自治体では、家族の望む介護サービスの提供が受けられないことが考えられますので、家族の負担が増える可能性があります。 


■介護事業者の介護離職をなくすと国が掲げる「介護離職ゼロ」の理想に近付く 
仕事と介護の両立を実現するためには、短期的な取り組みではなく、長期的な視野に立って事業計画を立て、短時間パートなどの人材活用や両立支援等助成金(介護離職防止コース)を活用することが必要となります。 

介護事業者での介護離職が増えると、介護施設が人手不足になり、介護サービスの低下を招きます。介護サービスが低下すると、家族の介護負担が大きくなり、国全体の介護離職が増加します。介護事業者は、まず自社の介護離職をなくすことが肝要です。 


介護事業最前線

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