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プロスポーツに学ぶ「若手を育てる意味」

17.09.01 |

プロスポーツは「結果がすべて」といわれている。 

プロ野球やJリーグの監督が、シーズン途中でも辞意を表明したり解任されたりするのは、「結果」を求める観客に応え、エンターテインメントとしての魅力を保つための判断なのだろう。 


客足が遠のいてしまったら、プロスポーツの興行としては評価されないからだ。 

では、監督の役割とはなんなのか? 
「結果」を追求し、チームを勝たせることがすべてなのだろうか。

例えば、サッカーのJリーグをみてみると、リーグ内のチームを複数渡り歩く監督がいる。 

彼らの指導にはある共通項がある。それは自分の立場よりも、若手選手の成長を優先していることだ。 

リーグ戦で結果を求めることと、経験の少ない若手選手を育てることは、一見相反するもののようにみえるかもしれない。だが、確実な成果が期待できるベテラン選手を使うだけでは、チームは遠からず停滞していくだろう。 

そうならないためにも、これから先のビジョンをもって、時には目の前の結果を犠牲にしても、若手選手を起用する采配が必要になる。 

ドラフト4位でオリックス・ブルーウェブ(現:オリックス・バファローズ)に入団したイチロー選手の話はまさに若手育成の好例だろう。 

彼が入団3年目のとき、新しく就任した仰木彬監督によって1軍に抜擢され大活躍し、不動のレギュラー入りを果たした。 
それまでは1軍の試合に出場することはあっても、結果を残せていない選手だった。 

チャンスを与えられた選手は、強く意気に感じるものだ。「まだ実績のない自分を、監督は信頼してくれている」という思いは、選手のプレーへの意欲をさらにかきたて、監督への信頼につながっていく。 

勝敗にこだわった手堅い采配ではなく、選手を第一に考えたチーム作りは、結果をこえて評価される。監督自身の可能性を拡げる。 

ビジネスシーンも同じだろう。部下を育てる上司の姿勢は、組織を活性化させる。 

若手はやがて中堅となり、ベテランとして周囲を引っ張る存在になっていく。若手の将来性を信じること、ミスを許容することは、巡りめぐって組織の成長を促すことになるのだ。 

すなわちそれは、上司である自分自身の可能性を拡げるのだ。



企業成長のための人的資源熟考 


●プロフィール● 
戸塚 啓(とつか・けい) 
1968年、神奈川県生まれ。法政大学法学部法律学科卒業後、雑誌編集者を経てフリーのスポーツライターに。新聞、雑誌などへの執筆のほか、CS放送で欧州サッカーの解説なども。主な著書に『不動の絆』(角川書店)、『僕らは強くなりたい~震災の中のセンバツ』(幻冬舎)。

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