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もしも「わらしべ長者」の長者さんが“民事信託”を利用していたら!? 資産を奪われないようにするために

17.09.08 |

先月は、相続対策をすることでトラブルを事前に防げるとお伝えしました。

今月も昔話「わらしべ長者」を事例にしながら、予防できるトラブルを詳しく見ていきます

判断能力が衰えても財産所有者の目的通りに管理・処分ができる

「わらしべ長者」の長者さんは、「自分の判断能力が衰えたら、財産が散逸してしまうのでは」と心配していました。
そこで何か手は打てないかと考え始め、たどり着いたのが今話題の“民事信託”という制度だったのです。

民事信託とは、財産を持っている方(長者さん)が信頼できる家族に財産を託し、目的に従って管理・処分してもらう制度です。

長者さんは、「代々受け継がれてきた長者一家の財産を将来にわたって引き継いでいく」ことを目的として、息子さんに財産の管理・処分をするようにお願いしました。
ただし、財産から生じる利益(例:長屋の店賃)などは、引き続き長者さんがもらい、隠居後の生活費に充てることにしています。

まだ若い息子さんに全財産を託してしまうと、「息子さんが慢心して、財産を食い尽くしてしまうのでは?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、民事信託にその危険はありません。
なぜなら、息子さんは長者さんが定めた目的に従って、財産を管理・処分する義務が課せられるからです。

すなわち、長者さんが定めた「代々受け継がれてきた長者一家の財産を、将来にわたって引き継いでいく」という目的から外れた財産の使い方を、息子さんはできないのです。

民事信託を活用することは、息子さんに家業を継いでもらうための事前準備にもなり、店賃などの利益を引き続きもらう長者さんにとっては一石二鳥どころか三鳥、四鳥のうまい話となります。


息子さんは財産が奪われるのを防ぐことができる

今度は視点を移して、息子さんの立場に立って民事信託を見てみましょう。

「長男だから」という理由だけで、息子さんは代々受け継がれてきた財産を押し付けられ、目的にそって管理・処分をしなければいけないという義務を課せられました。
この義務に違反すると、損失を補填する義務を課されるケースもあります。
息子さんからすると、財産から生じる利益を得られないにもかかわらず、重い義務だけ課されている形です。

ただ、民事信託は息子さんとってデメリットばかりではありません。
「争族問題を予防できる」というメリットもあるのです。

たとえば、「わらしべ長者」の主人公のような男が突如現れ、長者さんの財産が奪われそうになったとしても心配ありません。
財産はすでに息子さんの手の中にありますから。


不動産所有者は民事信託を活用すべき!

相続で最も相談が多いのは不動産に関する問題です。

高齢になった長者さんが病で倒れ、判断能力が急に衰えてしまった場合、長屋を処分して長者さんの治療費を捻出することはできません。
家族とはいえ、息子さんが長者さんの財産を勝手に処分することは許されないからです。

でも民事信託をしていれば、長屋を管理・処分する権限は息子さんにあり、目的にそう範囲で長屋の処分を検討できるのです。


民事信託は相続税対策にはつながらない

ここまでメリットについて述べてきましたが、民事信託のデメリットはあるのでしょうか?

1番大きいデメリットは、特に節税効果がなく、相続「税」対策にはならない点です。
また、制度が少し複雑で、多くの関係者を巻き込むことも頭に入れておかなければいけません。

先月もお伝えしたように、相続問題は事前に関係者で話し合っていれば、防げるトラブルが多くあります。相続トラブルの予防と考え、制度の申請が多少複雑だったとしても民事信託を利用してみてはいかがでしょうか。


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