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人口減少が進むなかで見い出す、在宅医療の新しいカタチとは?

17.10.06 |

国は20年以上にわたり、在宅支援診療所の創設などで在宅医療の推進を図ってきました。

この背景には、「住み慣れた地域で最期を迎えたい」という患者のニーズや、終末期医療に投入される膨大な医療費の削減という経済的な観点があります。

国が推進してきたことにより、在宅医療専門の診療所が登場したり、一般の診療所が午後や夕方に訪問診療を行ったりするケースが以前より増えてきているようです。

しかし、厚生労働省が当初思い描いていた「かかりつけ医による継続的なケアの一環としての在宅医療」という段階までには至っていません。

在宅医療で求められている「24時間365日対応」「看取り」は、医師にとって大変な負担になります。
また、患者のお宅を一軒一軒訪ねるのは、外来診療に比べて「効率的ではない」と感じられる先生方も多いのでないでしょうか。

そうお考えになるのは、もっともだと思います。
「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」(河合雅司著・講談社現代新書)では、「2040年に自治体の半数は消滅する」と予想されています。
特に地方の過疎化は今後、急ピッチで進展し、それによって在宅患者の分散化が進んでいくと思われます。

つまり、人口が急激に減少し、患者の住まいがさらに分散していくということです。
「お宅を一軒一軒訪問する」という従来型の在宅医療モデルが、ますます非効率になっていくことが想定されます。

そこで厚生労働省は、介護保険法の一部を改正する法律案を今年成立させ、介護療養病床の新たな転換先として介護施設の新類型「介護医療院」を創設し、「医療機能」「介護機能」「生活機能」を備えた長期療養者の受け皿をつくりました。

「介護医療院」は人員配置や施設基準などの違いにより「医療内包型(介護療養病床相当と老健施設相当以上に分かれる)」と「医療外付型」に分類されますが、注目すべきは後者です。

「医療外付型」とは、簡単にいうと医療機関に有料老人ホームなどの療養施設(居住スペース)を併設している施設を指します。
施設に医師を配置する必要がなく、「施設外からの訪問診療」という形で医療サービスを提供します。
居住スペースは、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けるサービス付き高齢者向け住宅(以下「サ高住」)や介護付き有料老人ホーム、ケアハウスなどが想定されています。

今回の「介護医療院」における「医療外付型」モデルは、介護療養病床からの転換が目的であるため、診療所の参加は認められないと思われますが、現状でも医療機関に有料老人ホームやサ高住を併設し、高齢者の医療・介護・生活ニーズを満たすことは可能です。

実際、北陸のある医療法人では、街の中心部に診療所をテナントとして入れた有料老人ホームを建設し、訪問診療をしていた患者を同ホームに集め、短時間で効率的に診療を行う医療体制を築いています。

このように、介護医療院の医療外付型は、人口減少と分散化する患者宅の現状を鑑み、「街の中心部の入居施設に患者を集める」ことを暗に認めた証といえるかもしれません。

患者のご自宅にお伺いするのが理想ですが、過疎化の進展やリソースの有効活用を考えた場合、このような「在宅医療のカタチ」も1つの選択肢となるのではないでしょうか。



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