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サッカー監督に学ぶ、“全員で共有していく”マネジメント方法とは?

18.03.02 |

ワールドカップ日本代表として10番を背負い、セリアAでもプレーした名波浩(ななみ ひろし)氏。 
彼は今、かつて選手として所属していたチーム“ジュビロ磐田”で、監督としての手腕を発揮しています。 

個性的な選手と大人数のスタッフを一つにまとめ上げ、低迷期だったチームを見事J1昇格へ導いたそのマネジメント手法とは、一体どのようなものなのでしょうか? 
そこには“情報や体験の共有という、企業の組織運営にも生かせるヒントがありました。

チーム運営を円滑にする2つのコト 

サッカーJ1リーグともなると、個性豊かな選手が30名ほど集まります。 

また、監督をはじめヘッドコーチ、フィジカルコーチ、GKコーチ、分析担当スタッフ、マネージャー、トレーナー、理学療法士、外国籍選手の通訳など大勢のスタッフがチームに関わります。 
そのため、全員が毎日集合してミーティングを開き、意思疎通をはかることは難しいのです。 
しかし、チームの目標や方向性の認識が全員で一致していなければ、チームは破綻してしまいます。 

そこで、サッカーJ1リーグ“ジュビロ磐田”の監督・名波浩氏が実践している、チーム運営を円滑にする方法を2つご紹介します。 

(1)監督自らが小さな変化を見逃さず、それをコーチ全員に共有する 

たとえば、 
・いつも腕時計を右手につけている選手が左手につけている 
・スパイクを変えた 
など、些細なことであっても“いつもと違う点”があれば声をかけ、ちょっとした変化も見逃さないようにしているといいます。 

そうやって常に選手とコミュニケーションをとり、“普段の温度感を把握しておくことが大切なのです。 
“普段の温度感”を把握していないと、選手の良い変化にも異変にも気付くことができません。 

こうして日々コミュニケーションを取ることで気づいた“気持ちが入っていない”などの“微かな異変”については、すぐにコーチ陣にも共有します。 
それは、その微かな異変がモチベーションによるものであっても、ケガや疲労によるものであっても、監督として、チームとして対処する必要があるからです。 

企業においても、上長自らが積極的に部下とコミュニケーションを取り、普段の温度感を理解しておくことは重要です。 
そうすることで、早期に部下の異変に気付き、大きな問題となる前に対処することができるでしょう。 

(2)体験を共有する 

名波浩監督をはじめ、ジュビロ磐田のコーチ陣はプロとして成功を収めた選手です。 
さらに、以下のチームのいずれにも関わっています。 

・現役時代にタイトルを獲得したチーム 
・あと一歩でタイトルをつかめなかったチーム 
・優勝争いに加われなかったチーム 

そのため、その時々の監督が何を語り、コーチらが何をして、その結果どうなったのかということを各々が体験しているのです。 
そして、その“成功体験”と“失敗体験”を“チームを勝利へ導くノウハウ”として、監督とコーチで共有しているといいます。 

さらに監督は、中村俊輔選手を獲得した際、フィールド上の体験はもちろん、フィールド外の体験も含めて、自身の体験談を若い選手に話してほしいと伝えたそうです。 

その結果、“厳しい環境の中で、上昇志向を持ってやっていた”という体験談が、若い選手を奮起させました。 


今回は、ジュビロ磐田が実践している『小さな気づきを見逃さず、体験や情報を共有していく』というマネジメント方法についてご紹介しました。 

部下と積極的にコミュニケーションを取り、細かな体験や情報をも共有していくことは、職場マネジメントにおいても有効な手段といえます。
ぜひ参考にしてみてください。 



企業成長のための人的資源熟考

●プロフィール● 
戸塚 啓(とつか・けい) 
1968年、神奈川県生まれ。法政大学法学部法律学科卒業後、雑誌編集者を経てフリーのスポーツライターに。新聞、雑誌などへの執筆のほか、CS放送で欧州サッカーの解説なども。主な著書に『不動の絆』(角川書店)、『僕らは強くなりたい~震災の中のセンバツ』(幻冬舎)。

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