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介護事業に適した助成金は?

14.06.08 |

介護事業所の経営で最も大きな障壁となるのが、
運転資金の問題です。
よほど潤沢な準備金がない限り、
あっというまに資金繰りの問題に直面し、
毎月運転資金の確保に悩まされ続けているという
事業所が多数存在しています。

介護事業最前線

中小企業では事業主も営業や現業に
従事する時間が長かったり、介護報酬の支払いが
2ヵ月後になるということで、どうしても
自転車操業になってしまう業界です。

そのため、多くの利用者を確保できていても、
黒字倒産に陥りやすい環境にあります。

安定した介護事業所を運営していくためには、良い「人材」が必要です。
しかし、採用するにも、従業員のスキルアップ研修のための費用もかかります。
資金調達の方法としては政策金融公庫や銀行の「融資」が思い浮かびますが、
必ず返済がつきまといます。

その点、「助成金」は「融資」とは違い返済不要の給付金となりますので、
いかに「助成金」を活用するかが安定した介護事業所経営につながる重要なポイントになります。

◆採用系の助成金
採用する前に助成金を視野に入れた採用計画を行うと受給の可能性が高くなります。

(1)試行雇用奨励金(トライアル雇用奨励金)
例)採用しても定着するか不安。
ハローワークを通じてトライアル雇用として受け入れた場合、
最大で4万円×3ヵ月=12万円が受給できます。
(途中で退職しても在籍期間に応じて受給できます)

(2)特定就職困難者雇用開発助成金
例)ヘルパーや事務スタッフとして、シングルマザーを採用しようと考えている。
ハローワークを通じて、高年齢者(60歳以上)・母子家庭の母、障害者等を雇い入れた場合、
1人につき60万~240万円が受給できます。

◆教育訓練系の助成金
近年では、教育訓練に関する助成金制度が充実している傾向にあります。
スタッフのスキルアップ研修を行っているまたはこれから計画している介護事業所では、
教育計画を練る際に助成金を検討してみましょう。

(1)キャリアアップ助成金
例)介護スタッフのスキルアップのためにOJTとOff-JTの研修を行おうと考えている。
事前に組んだ教育計画をもとに研修を実施した場合、
研修時間中の賃金助成(500~800円/時間)と研修受講費(上限20万円/人)が助成されます。

(2)キャリア形成促進助成金
例)外部で介護に関する専門研修を行おうと考えている。
研修時間中の賃金助成(600~800円/時間)と研修経費の2分の1が助成されます。

◆雇用改善や社内制度充実等の助成金
採用や教育以外にも労働条件向上の制度を設けたり、
働きやすい職場環境づくりに取り組む場合、助成金が受けられます。

(1)中小企業労働環境向上奨励金
例)職員の負担軽減のために移動用のリフトやストレッチャー等の
介護福祉機器を導入しようと考えている。
導入に要した費用や技術研修費の1/2(上限300万円)が助成されます。

(2)キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)
例)有期雇用契約のパート職員を正社員に転換しようと考えている。
正社員転換等の社内制度を規定し、有期契約職員を正社員に転換した場合、
1人あたり500万円が受給できます。 
 
その他にも見逃せない助成金がまだまだありますが、どの助成金も要件を満たさなければ
給付を受けることができません。また、助成金を目的とした事業運営では、
そのうち無理が生じて経営が行き詰まってしまう可能性もあります。

このようなメリット・デメリットについて事前により正確な情報を収集し、
自社に適した助成金があるかを把握した上で計画的に活用していくことが大事です。


[プロフィール]
田中 靖浩(たなか・やすひろ)
牧江・田中社会保険労務士法人所長・特定社会保険労務士。
創業から35年以上の歴史を誇る牧江・田中社会保険労務士法人、所長。これまで労務管理を支援してきた企業は1000社以上。現在、500社ほどの企業を顧問先として抱え、社会保険に関する事務のアウトソーシング、企業防衛型就業規則の作成と社内規則の整備、助成金申請などを受託。

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