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土地所有者の不明問題に活路、相続登記の登録免許税が一部免除に

18.07.26 |

増え続ける所有者不明の土地……その面積は、今や九州全土より広いとも言われています。ある土地は荒れ、またある土地は相続人の特定が困難になっています。なぜこのようなことになったのでしょうか。その原因の一つは、相続による所有権移転登記の際に発生する登録免許税と言われています。この負担が足かせとなって、所有権の移転登記が進まないのです。そこで平成30年の税制改正では、相続による所有権移転登記に対する登録免許税の免税措置が設けられました。今回は、この免税措置についてご紹介します。

所有者不明の土地にまつわる深刻な問題点

土地の所有者が不明であることによって、以下のような問題が生じています。

  1. 所有者不明の土地にゴミのようなものが捨てられて近隣から苦情が来ている。しかし土地の所有者が不明のため、それが廃棄物なのか管理されているものなのかが確認できない。
  2. 相続登記が放置されている間にさらに相続が発生し、最終的に相続人が数百人にのぼっている。土地が相続人全員の共有になっている可能性もあり、所有者の特定が困難を極める。
  3. 自治体が公共事業用地として獲得したいのに、所有者が不明のため手続きを進められない。
土地の所有者が不明である原因の一つが、相続による所有権移転登記の未了にあるとされています。その理由は、相続の際の手続きが煩雑で、費用がかさむことにあります。

所有者が不明であっても、『相続財産管理制度』を利用することで、土地の管理や清算をすることはできます。
しかし、そのためには利害関係人などから家庭裁判所に申し立てる必要があります。
また、相続人がいない場合は、『相続財産管理人』を立てなければいけません。
そのため、場合によってはかなりの費用や時間がかかることが考えられます。


なぜ今、所有者不明の土地が増えているのか?

相続が発生すると、土地の所有権も相続人に移ります。
その際、原則として相続による所有権移転登記を行う必要がありますが、これは義務ではありません。
また、所有権移転登記を行う際には登録免許税などの費用がかかるため、相続が起きてもそのまま放置されるケースが多いのです。

2017年6月に法務省が公表した『不動産登記簿における相続登記未了土地調査について』によれば、最後の相続登記から50年以上経過した土地は大都市で6.6%、中小都市・中山間地域で26.6%にものぼっています。
この中には、相続が起きているのに所有権移転登記を行っていないものが相当数含まれていると考えられます。

所有者不明の土地への全体的な対策として、『法定相続情報証明制度』の利用範囲の拡大や、今回テーマとしている登録免許税の免除が求められました。
これにより、相続に関する諸手続きの負担を軽減するとともに、相続を原因とした所有権移転登記を円滑に進めようという狙いがあります。


税制改正で、平成33年まで一部の登録免許税が免税に

平成30年の税制改正により、次の要件に当てはまるものについて登録免許税の免除が認められました。

1.相続で土地を所得した者が相続登記をせずに死亡した場合

『登記名義人Aから相続を原因としてBが土地の所有権を取得し、その登記が未了のままBが死亡した』
このようなケースにおいて、Bを登記名義人にするための相続登記については、登録免許税が免除となります。

相続における登録免許税は、土地評価額の0.4%です。
仮に土地評価額が3,000万円の場合、12万円の登録免許税が免除されることになります。
現時点では、Bを登記名義人にするための相続登記を平成33年3月31日までに行う場合に限って登録免許税が免除となります。

2.要件に該当する土地の価格が10万円以下の場合

『所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法』に関連して、登録免許税の免除が認められています。
相続登記の促進を図る必要があると認められる土地を相続によって登記する際、その土地の価格が10万円以下の場合が免除の対象です。
こちらも平成33年3月31日までが免除適用の期限となっています。

ぜひ、今回の登録免許税の免税措置を活用してみてはいかがでしょうか。



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