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無期転換ルール行使による不用意な雇止めに要注意

18.08.07 |

2018年4月から、有期労働契約の無期転換権の行使が始まりました。
この制度は、労働契約法という法律の改正により創設されたもので、国を挙げての制度といえます。
この無期転換権の行使との関係で、今、有期雇用契約の雇止めに紛争が勃発しています。

無期転換ルールとは?

有期労働契約は、会社が、必要な時期(繁忙期)に人を多く雇い、忙しくない時期(閑散期)には人を減らすことができるという、使用者にとっては使い勝手のよい制度です。
そのため、多くの企業において、無期雇用契約である正社員を減らし、有期雇用契約を増やすという扱いが増えてきました。
その結果として、多くの労働者は、有期雇用契約という不安定な状況に置かれることになり、その点が、問題視されてきました。
これに対する対応として創設された制度が、有期雇用の『無期転換制度』です。
有期雇用契約は、必要な時に契約をし、必要がないときには、契約をしないという使い勝手のよさがメリットでした。
すなわち、使用者は、有期雇用を繰り返していても、不要となれば、契約を更新しないことで労働者の数を調整することができていたのです。
もっとも、これを自由に認めすぎると、労働者の地位が不安定になりすぎますので、従来、有期雇用契約が反復継続され、労働者が、有期雇用契約が継続されることに対して期待権を有するに至った場合には、正当な理由のない有期契約の打ち切りは、不当な雇止めとして違法とされてきました。


使用者による雇い止めは無効な例も

この論点に最近、新たに加わっている論点が、使用者による雇止めが、無期転換権の潜脱のためになされるものであり、無効ではないかというものです。
実際に、現在まで、複数の訴訟が提起され、裁判所の判断も出始めています。
現在、確認できるものでは、使用者による雇止めは、労働者の無期転換権を奪うものであるとか、無期転換権の潜脱目的でなされた違法なものと明示的に判断されたものはありません。
もっとも、今後、多くの企業が、有期雇用が5年目にかかるタイミングで雇止めを行った場合には違法との判断がなされるおそれがあります。
これに対しては、有期雇用の契約の時点で、事前に更新の回数を制限し、そのことを労働者にも理解をさせておくことが有効な対応と考えられています。
もちろん、始まったばかりの制度ですので、今後の裁判所の同行には注意が必要ですが、使用者においては、無期転換権の行使がなされることを避けるという安直な理由で雇止めを行うことには慎重な対応が必要といえるでしょう。

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