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業務上災害でも解雇は可能? 「傷病補償年金」がカギになる

15.10.02 |

業務上の傷病により休養し、一定期間を経て、会社規程の休職期間の満了を迎える従業員がいます。現在は傷病補償年金を受給しています。

本人が休職期間満了による退職に応じない場合、業務上災害では解雇は難しいのでしょうか?

労災保険では、労働災害による従業員の当該傷病が療養開始後1年6ヵ月を経過しても治癒しない場合は、所轄労働基準監督署長の職権により傷病等級(1~3級)に応じて傷病補償年金の支給決定がなされます(労災保険法12条の8第3項、労災則18条の2)。支給が決定すると、それまで受けていた休業補償給付を受給することはできず、以後は年金受給に切り替わることになります。 

労働基準法では19条において「労働者が業務上傷病で休業する期間および復職後30日間は解雇してはならない」としていますが、ただし書きで「打切補償を支払った場合にはこの限りではない」としています。打切補償がどのようなものかといえば、81条において平均賃金の1200日分としていて、「労働基準法75条に基づく療養補償」を受ける労働者が、3年を経過しても傷病が治らない場合、打切補償を行うと、企業はそれ以降の(労働基準法の)補償責任を免れると規定しています。 

ところで、実際、復帰が見込めない従業員を解雇するために、平均賃金1200日という高額な支出を伴う打切補償を支払うケースはそれほど多くないようです。被災労働者を抱えた多くの企業では、労災保険法19条にある「業務上傷病にかかった労働者が、療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合等は、労働基準法81条により打切補償を支払ったとみなす」という規定を利用しようとします。 

今回のケースは傷病補償年金を受けている場合等に該当するでしょうから、労災保険法19条に該当するとして打切補償支払い済みと解釈し、解雇が可能と一応は考えられるでしょう。 

しかし、最近長期にわたっている裁判で、本件に関して微妙な判断もされていますので、解雇には少し慎重な対応を要するでしょう。 


現場で気になる労働法Q&A


【記事提供元】 
安全スタッフ2015年7月15日号

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