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キャリア人材で大切なのは会社の経営方針とのすり合わせ

15.12.11 |

当たり前のことですが、会社が必要とする人材にはいろいろなコースがあります。将来にわたって基幹的な仕事を担うコースは大切ですが、誰でもすぐできる定型的作業もありますし、業務量の増減に合わせて調整できる人材も必要です。

人材育成を社内で行うとすると、新卒を採用して、教育訓練をして、計画的な配置転換も行う必要があります。そして、費用と時間をかけた人材は、長期的に雇用しなければ、元が取れません。

<ビジネスは変動がつきもの> 
人々の生活の変化はそれほどではないとしても、それを取り巻くビジネス環境は日進月歩。小さい企業ほど変化が大きいものです。そのときの人材計画は、長期的な軸と短期的な変動を調整できる方策とを併せ持たなければなりません。 
長期的雇用は人材の安定を促しますが、経営環境の変化に対しては費用が割高になります。人事部や教育部は、柔軟な対応をする必要があります。 

<ある製造企業の事例> 
西日本にある電子部品製造業の例です。2,000人前後の労働力を擁し、1事業所のみのこの会社は、基幹工の養成と外部人材の調整が常に大きな課題です。外部人材というのは、派遣と請負です。内部人材は全員社員で、業務量による人材の調整は、外部人材によって行っています。内部人材は1,400人程度。外部人材は400人から700人の間を増減しています。 

この企業の基幹工は、地元の優秀な工業高校生を採用して育成に力を入れていますが、交替勤務があると人気が低いので福利厚生や休日で優遇しようとしています。そのため地元の評判を気にして、雇い止めがつきもののパートや臨時は雇いません。派遣や請負は業務の増減が当然なので、地元の評価にはそれほど影響を与えないようです。現場には高度の固有技術や管理技術を持った人材が必要なので、海外なら大卒や院卒が行うくらいの水準を確保しようとしています。 

市場がグローバル化し、新製品の開発競争が激しい今日、この企業でも受注は海外が圧倒的です。ただ、他社と違って生産は圧倒的に国内で行っています。つまり、高いレベルの仕事ができる人材を育成することで高い労務費を吸収して、「ものづくり力」を強化しようとするのです。これでこそ、同業他社に差をつけることができると自負しています。


企業成長のための人的資源熟考 


[プロフィール] 
佐野 陽子(さの・ようこ) 
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。 


[記事提供] 

(運営:株式会社アックスコンサルティング)

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