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ビジネスは“アイディア勝負”。広告界が育ててきた「発想法」を学ぼう。その4

17.01.13 |

前回までご紹介してきた「アイデアのつくり方」ジェームス・W・ヤング著が古典的名著だとすると、近年の名著は、大手広告代理店に勤める加藤昌治さんの著書「考具」だと思います。 

「考具」とは、考えるための道具を表す、この本特有の造語です。常に斬新なアイディアが求められる広告代理店の企画マンたちも、必ずしも天才ぞろいではありません。たいていは「ただの人」であり、いくつもの「考具」を駆使して、なんとかアイディアを生み出し続けています。丸腰で企画はできない、とこの本の著者は説いています。 

「考具」は全部で21個あり、3タイプに分かれます。 
(1)アイディアの素になる「情報を頭に入れるための考具」 
(2)アイディアの素を展開させる「アイディアを広げる考具」 
(3)企画を具体化させる「アイディアを企画に収束させる考具」 
の3つです。ここでは、(1)と(2)のタイプにあたる「考具」をいくつかご紹介していきます。

●「カラーバス」と「ちょいメモ」でアイディアの素を得る● 
まずは(1)から、「カラーバス」と「ちょいメモ」です。アイディアには「素」となる情報が必要です。それを得るための道具たちです。 

「カラーバス」は、「Color Bath」=色を浴びるという意味です。例えば、ある日は「赤」に注目して暮らします。外に出ても、オフィスでも、「赤」を意識します。すると、妙に赤い車が目についたり、すれ違う人の赤い洋服が目に入るようになります。 

さらに、色以外の何かを特別に意識するのも有効です。例えば「高い場所」を意識して、いつも歩いている通りを少し目線を上げて歩くだけで、普段は目に入ってこない看板やお店が意識に飛び込んできます。

こうやって、“ごく普通に過ごすとき”とは違う情報を入れるという方法です。ぜひ試してみてください。「普段こんなにも同じものしか見てなかったのか!」と驚いてしまうと思います。 

「ちょいメモ」は、なんとなく気になったものを、片っ端から“ちょこっと”メモをするというものです。手帳、ノート、本の余白、スマートフォンのメモアプリなど、どこでもいいから、とにかく書きます。「メモすることの効用は、頭の中にあるものを外に出す作業をすることにある」と著者は言います。この「ちょいメモ」は、記事から、論文、研修などあらゆる企画の素になるでしょう。 

●「ポストイット」と「オズボーンのチェックリスト」でアイディアを広げる● 
次に(2)から、「ポストイット」と「オズボーンのチェックリスト」です。いくつかあるアイディアの素をどのように結び付け、どのように展開していくかに役立つ道具たちです。 

「ポストイット」を使って行うアイディア会議は、広告代理店では定番中の定番です。正方形で大きめのサイズのものを使い、1枚1ネタが原則です。とりあえず、課題に関係ありそうなことで思い浮かんだものを、そのまま書いていきます。 

まずは量で勝負。なるべくたくさん書いたら、壁に貼っていきます。「うーん」と唸りながら、あるいはワイワイ言いながら、関連のありそうなものを近くに貼り直してポストイットのかたまりを作っていき、そこから実際のアイディアにつなげていきます。 

「オズボーンのチェックリスト」は、アイディアに行き詰ってきたときに活躍します。アイディアのヒントは作り出すのではなく、「探す・見つけるという捉え方の方が正解」だとこの本には書かれています。

チェックリスト項目は、「転用したら?」「応用したら?」「変更したら?」「拡大したら?」「縮小したら?」「代用したら?」「置換したら?」「逆転したら?」「結合したら?」の9つ。このチェックリストに沿う形で、今手元にあるアイディアの素をいろいろと展開してみることで、行き詰まり解消につながっていきます。 

●まとめ:「考具」を仕事や暮らしに活かす● 
3タイプの「考具」の中からいくつかをご紹介しました。ぜひ、皆さんの仕事や毎日の暮らしに活かしてみてください。 

さて、次回からは、広告業界になくてはならない「コンセプト」と、そのさまざまな場面やビジネスでの活かし方について、お話ししていこうと思います。 

次回は、『広告になくてはならない「コンセプト」。これが意外と、いろいろ役に立つんです。その1』です。 


●プロフィール● 
佐藤達郎 さとうたつろう 
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。

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