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「弱い結びつきの強さ」が特徴あるビジネスのヒントをくれる!

17.03.31 |

アメリカの社会学者・スタンフォード大学のグラノベッター教授が提唱した「弱い結びつきの強さ」は、ビジネスにとってもなかなか示唆に富む考え方で、人々のネットワークについて研究する“ネットワーク論”という分野で有名な理論です。

■「価値観が同じ同僚」よりも「10年来の旧友」 
この研究は、転職についての調査・観察から始まりました。新しい仕事に関して、志を同じくする社内の転職希望者の中で話し合っていたとします。「志を同じくする社内の転職希望者」というと、一見、強力な情報収集手段に見えるかもしれません。 

しかし、グラノベッターはそうでないと言います。むしろ、同僚のように近い関係の人は、自分と似た価値観や情報を持ちがちです。そうすると似通った情報しか交換できず、話し合っても発見が少ないというのです。 

逆に、「10年来会っていない旧友」や「一度だけ飲みに行った、取引先の知り合い」というように、いつもはあまり密接につながっていない知人を通して、有用な情報がもたらされる場合が多いのが実情です。 

■違う境遇、違う業界の人との“弱い結びつき”を増やす 
この「弱い結びつきの強さ」が示唆することは、いつも同じ仲間、同じ業界の人とばかり情報交換していないで、まったく違うタイプの人々と接することの重要性です。 

一般的に、ビジネスに関する相談は、同じ境遇の人、同じ業界の人の中に答えを見つけようとしがちです。それに対して、普段会わない“弱い”結びつきの人は、持っている情報も価値観も、大きく異なります。 

あなたが飲食業界にいるなら、エンタテイメント業界の人と会ってみる。金融業界の人なら、広告業界の人と話してみる。健康関連業界にいるのならば、職人さんと会う機会をつくってみる。あるいは、同じ街に住む同郷の人が集まる機会を作ってみる。 

そういった“弱い結びつき”を増やして、そこで得られる情報や考え方や人のつながりを大切にして、いつも自分のビジネスに関連させて考えるクセを付けることが大切なのです。 


■学生時代の仲間と会うとビジネス創出のヒントが生まれる!? 
“学生時代の仲間に声をかけて、何年ぶりかの食事会を開催してみる”ということでも、思わぬヒントやチャンスに巡り合えるかもしれません。 

ただ懐かしさだけで終わらせるのではなく、自分のビジネスについても考えを巡らせながら過ごすことをお勧めします。 

もちろん、学生時代の仲間と食事会を開くことが、必ずすぐに自分のビジネスに有用な情報に直結するかどうかはわかりません。ただ“新しいヒント”につながる可能性は少なくないというのが、「弱い結びつきの強さ」理論の教えです。ちょっとした特徴のあるビジネスを創出するヒントが得られるかもしれません。 

次回は、消費者間の相互作用に関連した「信頼と安心」について、考えていきましょう。 


佐藤達郎のマーケティング論 


●プロフィール● 
佐藤達郎(さとう・たつろう) 
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。

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