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診断書に就業可否の判断を記載し、治療と仕事の両立を支援

17.05.02 |

がん患者の治療と仕事の両立支援が始まっているように、脳卒中や肝疾患などでも、治療と仕事の両立支援の取り組みが開始されたのをご存じでしょうか。 

今後、かかりつけ医の先生方が日常診療で扱っている疾患にも、治療と仕事の両立支援が広がっていくことが予想されます。 

■患者は「治療の中断」か「退職」の選択を強いられている 
厚生労働省が平成28年2月に発表した「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」によると、治療と仕事の両立の現状では、糖尿病患者の8%が治療を中断していることが判明しました。その理由では「仕事(学業)が忙しいから」が最多でした。 

一方、過去3年間で病気休職制度を新規に利用した労働者の38%が、復職せずに退職しています。いかに治療と仕事の両立が難しいかがうかがえます。 


■企業側は「病気や治療に関する見通しがわからない」「復職可否の判断が難しい」 
東京都が平成26年に発表した「がん患者の就労等に関する実態調査」をみると、がんになった従業員の適正配置や雇用管理等について89.5%の企業が苦慮しています。苦慮内容で最も多いのは「病気や治療に関する見通しがわからない」60.2%で、続いて「復職可否の判断が難しい」51.9%となっています。 

そこで「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」では、企業側の意識啓発、相談窓口の明確化、傷病休暇・病気休暇や短時間勤務制度、在宅勤務、時差出勤制度、試し出勤制度などの休暇・勤務制度の整備の必要性とともに、企業側が疾病を抱える従業員の就業上の措置について、主治医・産業医等の意見を勘案した両立支援プランの作成が望ましいと述べています。 


■就業継続、職場復帰の可否について主治医が意見 
ガイドライン巻末には、労働者の勤務情報を主治医に提供する書式、就業継続の可否について主治医の意見を求める際の書式、職場復帰の可否について主治医の意見を求める書式が紹介されています。 

書式では、現在の症状や治療予定の項目に続いて、就業の継続の可否(「可」「条件付きで可」「現時点で不可」)、望ましい就業上の措置(提供された勤務情報を踏まえて「重いものを持たない」「暑い場所での作業を避ける」「車の運転は不可」など、医学的見地から必要と考えられる配慮)、その他の配慮事項(「通院時間の確保」「休憩場所の確保」など、治療のために必要な配慮)といった項目の記載が求められています。 

ガイドライン巻末の新しい書式は、患者さんの勤務情報を踏まえた上での就業の可否や配慮など、従来の診断書とは記載内容や視点が異なっています。かかりつけ医の先生方には新たな書式での診断書となりますが、患者さんの治療と仕事の両立支援のために、ぜひお力添えいただきたいと思います。 


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●プロフィール● 
藤原恵子(ふじわら・けいこ) 
医療系出版社の編集記者を経て独立。フリーの医療ライターとして、病院経営、開業ノウハウ、医療マーケティング、医療ボランティア、医療職のキャリアアップや結婚事情などをテーマに医療関連雑誌で取材・執筆活動を行う。書籍では、病院ランキングや医療マンガの取材協力、看護・介護関連書籍では『イラストでわかる高齢者のからだと病気』(中央法規出版)の企画・編集に携わる。趣味は人の話を聞くこと、古文書解読。

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