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拡大路線の高齢者雇用。現状と留意点は?

16.05.13 |

今日、高齢者雇用が増えるのは必須です。その理由は4つ挙げられます。

第一に、いまの高齢者は健康で、まだまだ働く意欲が十分です。

第二に、日本の就労人口が減ってくるとき、高齢者に頼るのがもっとも簡便です。

第三に、働く期間が長ければ、社会保障の費用を節約できるのです。

第四に、定年のように年齢で線引きをするのは現代の公正観に反します。欧米では、年齢差別が禁止されています。

<高齢者が働くときの留意点> 

高齢者は、元気といっても青壮年期とは違います。仕事にもよりますが、通常、次のような傾向があります。

1日の労働時間は短めに。週の就業日数は3~4日が好まれる。時間帯は通勤ラッシュからずれた方がいい。そして通勤時間は短い方がいい。さらに、仕事の負荷や新しい技術に慣れるには時間がかかる。

つまり、正社員は必ずしも好まれません。仕事の種類も限られますから、人員計画ではそれなりの配慮が必要でしょう。 

<ダイバーシティと高齢者> 

一般の人たちと交じり働く場は、どのようなところがあるでしょうか。

ある大企業の職場で、男性高齢者を「債権取り立て」業務担当として採用しました。

能力もあり熱心なのですが、周囲は一目置くだけで溶け込むには至りません。

また、ある大きな居酒屋で高齢男性の店員を使いましたが、ベテラン店員や外国人店員のいる職場からいつの間にか姿が消えました。 

<高齢者が活き活きと働いている仕事> 

職場といえるのかどうかわかりませんが、特に男性高齢者が意欲的に働いているのはボランティアです。

地域の交通整理や観光案内などは、見合った能力が活かせますし、時間的にも融通がききます。

動物園の案内係は退職者だそうですが、ミュージアムの案内は人気職種で競争が結構大変です。

最近の傾向として、自家用車で送迎をするとか、自宅で民泊をやる例も増えているそうです。ただし、このような個人営業の仕事には、情報機器の利用が欠かせません。 

<高齢者を職場で活用するのはこれから> 

高齢者がスタッフの一員として、男女・年齢に関係なく活き活きと働いている職場は、まだまだ探すのに苦労します。

しかし、年功賃金の呪縛から解き放されて、能力とやる気のある高齢者を活用しない手はないでしょう。 


企業成長のための人的資源熟考 


[プロフィール] 
佐野 陽子(さの・ようこ) 
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。 


[記事提供] 

(運営:株式会社アックスコンサルティング)

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