TFSグループ/TFS国際税理士法人 理事長 山崎 泰

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『ダイバーシティ』~ ISAKにみる『ダイバーシティ教育』~

17.07.18 | 人事・育成・組織

■ 耳にする機会が増えた『ダイバーシティ(diversity)』

小池百合子都知事就任以来、以前にも増して『ダイバーシティ(diversity)』という言葉を耳にする機会が増えてきました。

HPを見ると、
『ダイバーシティ~女性も、男性も、子どもも、シニアも、障がい者もいきいき生活できる、活躍できる都市・東京』
と掲げられています。

都政にも、『ダイバーシティ』を積極的に取り入れていこうという・・・まさに女性都知事ならではの着眼点ともいえるでしょう。

都議会OBとしても、大いに注目していきたいと思っています。

実は当社でも、税務会計部門の審査部長はじめ子育て中の女性社員、テレワークを活用している女性社員など、要所要所は女性なのです。
士業チームとして、定められた期限内に、なすべき業務を、報告連絡相談体制のもとに進めていくにあたって、いかに女性の業務遂行能力が高く、正確かつ誠実かということ・・・、肌身をもって実感してきたことにもよります。

女性は、そば屋の出前のような報告をすることはありませんね。。。

でも本当は・・・家では、妻の言うことのほうがかなり正しいということに、結婚後かなり経ってから気がついたという大いなる反省が、お恥ずかしながら、当社のよちよちダイバーシティ・マネジメント??のきっかけだったのですが。。。

■ そもそも『ダイバーシティ』って?

『ダイバーシティ』とは・・・ひと言でいうならば、人材の多様性

人種・性別・国籍などのように、外見から識別可能な「表層的ダイバーシティ」と、
宗教・価値観・性格などのように、外見からは識別しにくい「深層的ダイバーシティ」と、
大きく二つに分けられます。


さらに『ダイバーシティ・マネジメント』は、
人材の多様性を戦略的に活かすことで、
企業や組織のパフォーマンスの最大化を目指そうという経営手法。
多様性がもたらす様々な軋轢・コンフリクトを、
新しい価値の創造に結びつけようというものです。


■ 1960年代 米国~2000年代に日本へ

そもそも『ダイバーシティ』という考え方自体は、
1960年代の米国で公民権運動など人権問題への取り組みのなかで生まれたといわれています。

「黒人」や「白人女性」に対する、採用や業績評価での差別的な人事慣行を撤廃しようという動きがきっかけとなって、
やがて障がい者、高齢者などのいわゆるマイノリティをすべて包括する考え方に変わっていきます。

そして『ダイバーシティ・マネジメント』として企業経営にも浸透していくに至ります。

日本では2000年代以降、少子化による労働力不足が深刻化するなかで、
女性、高齢者、障がい者、外国人など、多様な労働力を活かす必要に迫られているということが背景にあるようです。

同性婚、LGBTなど、家族観が大きく変わりつつあることも、さらなる背景にあるのかもしれせん。


■ フォールトライン(断層線)を引くことなかれ!

日本でも、企業競争力という観点からも、
多様な人材を活かして、多様な顧客ニーズに応えていかないと、継続企業として生き抜くのが厳しい時代。

顧客の多様なニーズに応えるには、ニーズに応えられる最前線の多様な人材を、いかに育成・活用できるか!

今では少ないかもしれませんが、
いわゆる男性社員は経営幹部・総合職候補、女性社員は一般社員・事務職的な・・・
フォールトライン(断層線)を引いてしまったのでは、その先に進みようがありません。

性別などの目に見える「表層的ダイバーシティ」のみならず、
価値観などの目に見えない「深層的ダイバーシティ」をも活かして、
各人の個性を最大限に引き出し、経営に生かす知恵や戦略が生み出せたら、
企業としての競争力が強まるのも、自然とうなずけます。


■ 一方で、「和」「同質性」を重んじる日本の風土

しかしその一方で、日本では、伝統的に職場の「和」や社員の「同質性」を重んじる風土があるのも事実です。
企業としての競争力の源泉である「チームワーク」「統率性」を保持するためには、
欠かせない重要な価値観でもあるからです。

冒頭でふれた、多様性がもたらす様々な軋轢・コンフリクトを、新しい価値の創造に結びつける・・・
というのは、まさに「言うは易し、行うは難し」の典型かもしれません。

『ダイバーシティ・マネジメント』を目指す、考え続けるということ自体が、
実は企業を強くする一里なのではとすら思うのです。


■ ISAK(学校法人インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢)

そんななか、目にした、ISAK(学校法人インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢)
今年6月に卒業した第1期生の密着取材番組。

企業が悩む『ダイバーシティ・マネジメント』をはるかに超えて、
これぞ『ダイバーシティ教育』を地でいく内容・・・と共感するばかりでした。

かつてユニセフに務めていた小林りん氏が代表理事となり、
変革期の社会リーダーを育てようと、6年間の準備期間を経て2014年8月に軽井沢に開校した、
全寮制の国際高等学校です。

教育理念として掲げているのは、
『アジア太平洋地域のそしてグローバル社会のために、
新たなフロンティアを創出し変革を起こせるチェンジメーカーを育てる』


社会や地域のリーダーが変わらなければ、
現状は何も変わらない・・・との設立理念は、
私の出身母体でもある松下政経塾にも通ずるものがあり、
共鳴するところ大です!

3年間の全寮制生活は、授業も日常会話もすべて英語。
世界中の39の国と地域から、155名の生徒が在籍しています。


■ 多様性を認め合わないと、授業のひとコマすら進まない・・・

番組で取り上げていたのは、5月の高校2年生の歴史授業風景。

授業内容は、フランス大統領選挙についての意見交換。
ナショナリズムとは何か、様々な視点を示して生徒に考えさせる、
教師が一方的に教えるだけの授業では決してありません。

多国籍の生徒が集っていますので、
まさに人種を超えた価値観の違い、出身国の政治制度、民主制度の成り立ち等々、
「表層的」にも「深層的」にも、意見がまったく異なるのです。

民族紛争の末民主主義を獲得した国、隣国との壁を乗り越えるべく多数の犠牲者を出した国、
それぞれの出身国によって、『多様性』というひと言では片づけられないフォールトライン(断層線)が
潜んでいるようにも思えます。

生徒たちは、自国のナショナリズムを背景にしつつも、
他の生徒のナショナリズムを正面から真剣に聞き取って議論しています。

まさに他の生徒の多様性を認めないと、多様な考え方を認め合わないと、
授業のひとコマすら進まない・・・そんなISAKの授業風景。


■ ふるさと納税も支えるISAK~ひとつの理想的な姿が

しかしながら、『ダイバーシティ』も大事にする、新しい教育スタイルゆえの課題も。。。

それは、「財務基盤の確立」と「継続性」。
学費は、生徒一人あたり年間400万円!!
エッ、3年間ではなくて、年間?
そんなに払えるの??
率直な感想かもしれません。。。

ISAKでは、多様な生活水準のクラスメートにふれることも、まさに多様性・・・
番組では、こうコメントされていました。
そんな趣旨から、生徒の7割に、無償奨学金が支給されています。
総額にすると、毎年なんと4億円近い奨学金が生徒たちに支給されているのです。

もちろん、心ある多くの財界人・教育者の方々が支えておられるのですが、
地元の軽井沢町も一体となって知恵を絞って、一生懸命支えている姿も、
これからの『ダイバーシティ教育』を考える参考になります。

軽井沢町は、ふるさと納税として、「ISAK教育支援」という、
学校を指定して寄付を集める試みも取り入れています。

肉や魚や食べ物で返礼すれば、確かに楽しく美味しいけれど、食べたら終わり。

「早く米を分けろ」といきり立つ藩士たちに、
「この米を、一日か二日で食いつぶして後に何が残るのだ。
国が興るのも滅びるのも、町が栄えるのも、衰えるのも、
ことごとく人にある」
と説いた長岡藩・小林虎三郎の「米百俵」をも彷彿とさせる、ISAKなのです。

税を扱う職業会計人として、ふるさと納税~心ある寄付~教育~次代の人材育成という流れは、
ひとつの理想的な姿にも映ります。


       平成29年(2017年)7月
               山  崎   泰

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