大阪プライム法律事務所

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松居一代の大暴走

17.07.30 | ニュース六法

あの松居一代氏が起こしている騒ぎは、いったい何なのでしょか。

今年の6月27日に「恐怖の告白」として、1年5カ月もの間、尾行されているとブログに投稿したときからです。その後、離婚調停が申し立てられていることが報じられるや、夫の船越英一郎氏とハワイ在住の女性エステティシャンとが浮気をしていると言い出したり、「別宅の真相」と題するYouTube動画で、夫と大宮エリー氏とが不倫だと言い出したりして、もはやどこまで行くのか予想もつかない騒動になっています。

このような中、船越氏の所属事務所が、名誉毀損および業務妨害などを理由とする法的措置の準備に着手したとの見解を公表したことで、少しはトーンダウンするかとも思えましたが、必ずしもそうでもないようでうす。

この件は、あまりに多くの法的問題を絡むので、とても解説どころではありませんが、船越氏の所属事務所が明示した、「名誉毀損」と「業務妨害」については、簡単に触れておきたいと思います。

■船越氏の所属事務所公表文

「松居一代氏の、当社所属タレント船越英一郎に対する一連の言動には、裁判所の判断を仰ぐべきものが多く、これ以上看過することのできない問題であり、本日、当社として、名誉毀損(きそん)および業務妨害などを理由とする法的措置の準備に着手しましたことをお伝えいたします。」(全文そのまま)

 

■名誉毀損罪

驚いたのは、松居氏が、夫とハワイ在住女性エステティシャンが不倫にあると公表し出したことでした。これは、船越氏や、不倫相手とされた女性に対しての明白な名誉棄損罪になり得るからです。また、船越氏に対して、「バイアグラ100ml 男」という言葉で非難をしていましたが、これも、あたかも家庭を顧みずに性欲に走っている倫理観欠如男だとけなしているものです。それら船越氏へのさまざまな事実適示や、その延長戦線で名前を出された大宮エリーさんなどに対しても名誉棄損罪になり得ます。

 

この罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立します(刑法230条1項)。法定刑は3年以下の懲役か禁錮、または50万円以下の罰金です。

 

古い判例で、「背徳または破廉恥な行為のある人、徳義または法律に違反した行為をなした者であっても、当然に名誉毀損罪の被害者となりうる」としたものがあります(大審院判決昭和8年9月6日)。

 

公然と適示した事実が、仮に事実であっても、この罪は成立します。事実の有無や真偽を問わないのです。つまり、不倫の事実が実際に存在したか、存在しなかったかは、この犯罪の成否に関係は無く、およそ人の社会的評価が害される危険が生じたら罪は成立します。社会的評価が害される危険が生ずればよいので、実際にそれによってその人の社会的評価が害されたかどうかも関係ありません。

 

なお、例外として、公共の利害に関する事実に関係することを、専ら公益目的で摘示した結果、名誉を毀損するに至った場合には、その事実が真実であると証明できた場合は処罰はされません(刑法230条の2第1項)。これは、「真実性の証明による免責」と言われるものですが、今回のような場合には、およそ公共の利害に関する事実に関係することとは言えません。

 

また、この罪が成立するためには「公然」とすることが必要ですが、インターネットでの書き込みが対象となるのは明白です。特に、マスコミを通じて意図的に公表している動きも公然としていることとなります。

 

なお、名誉毀損罪は親告罪です。しがって、被害者からの告訴がなければ、検察官は公訴を提起することができません(刑法232条1項)。したがって、船越氏もそうですし、ハワイの女性や、大宮エリー氏も、そこからの刑事告訴がないと始まりません。実際に刑事告訴するかどうかは、ご本人次第ですが、告訴後も捜査に協力をしたりする手間や心労が大変だということで、告訴するとは限りません。

 

■民事上の名誉毀損(不法行為)

こういった行為は、民法上の不法行為ということで、損害賠償の対象にもなります。

それ以上に、中居氏にとって不利になるのは、今後、家庭裁判所で始まる離婚調停であろうと思います。およそ、松居氏に有利になるとは到底思えません。松居氏が、きちんと弁護士と相談して対応を依頼していれば、その弁護士は、およそ松居氏にこんなことはさせないはずです。
しかし、きちんとした弁護士が付いて彼女の利益になるように指導しても、言うことを聞いてもらえるのか、へたをしたら解任されてしまうかもしれない気もします。大暴走を止めることはできるでしょうか。

 

■業務妨害罪

船越氏の所属事務所が準備を始めたとした中に、名誉毀損以外に、「業務妨害」もあげていました。この業務妨害罪とは、刑法223条に規定される犯罪です。法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

 

つまり、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の業務を妨害すること」です。業務妨害罪には、こういった虚偽の風説流布や偽計を用いたものと、威力を用いて妨害する「威力業務妨害罪」とがあります。今回の件で言えば、虚偽の風説を流布によって、船越氏の業務や、所属事務所の業務を妨害したことになろうかと思います。

 

よく摘発されるケースとしては、おふざけでネットの掲示板などに「○○小学校の給食に毒を混ぜた」「〇〇駅に爆弾を仕掛けた」などと書き込み、学校の給食を中止させたり、本来必要のない警備・警戒をさせたということで、学校や警察に対する威力業務妨害罪で逮捕されることがあります。

 

■今後

松居氏のYouTube動画は、まるでサスペンスドラマを彷彿とさせるようなもので、思わず眺めてしまい、はたしてどうしてあげたらいいのだろうかと思わせるようなものです。しかし、怖いのも事実。早くこのようなことはやめて、周りを巻き込むことなく、夫婦間での話し合いで解決してもらいたいものです。

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