小川雅史司法書士事務所

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遺産相続時、兄弟が仲違い……共有持分権のある土地・建物の行方は!

17.11.02 | 業種別【不動産業(相続)】

弟の二郎が兄の太郎に対して怒りをあらわに声を荒げています。 
「オイ兄貴、早く家を売って遺産を分けてくれよ!」 

しかし太郎は「俺はずっと親父とお袋と、この家を守ってきたんだ。この家は売らないし、親父達の面倒を看てこなかったお前には一銭も渡さない!」と応えます。 
そして、遂に二郎は「そうかい。それなら弁護士を雇って、まずは兄貴を追い出してやる。覚悟しろよ!」と言い放ち、その場を去ってしまいました。

【問題の設定】 

事案を単純化します。
お母様はずっと昔に亡くなられていて、お父様も最近亡くなられました。相続人は2人(兄弟)だけで、遺産はご両親と長男の太郎が暮らし続けてきた土地・建物だけという設定にします。 

さて、このような状況で二郎の狙いは成功するのでしょうか。 

今回の事例には様々な問題点が存在しそうですが、被相続人(親父)と同居していた相続人(太郎)に対して、他の相続人(二郎)は遺産たる不動産の明渡しを要求できるのか? 逆に、太郎は家に居座り続けることができるのか? という問題に限定して考えてみようと思います。 


【解答】 

まず、被相続人が死亡し相続が発生すると、被相続人の財産(遺産)は、各相続人の共有状態におかれます(民法898条)。

つまり、今回の土地・建物は、“太郎と二郎が2分の1ずつ共有持分権を有している”という状態におかれます。
今回の事例では、二郎も2分の1の共有持分権を有しているにもかかわらず、太郎が土地・建物(遺産)を独占してしまっているのですから、二郎は太郎を退去させることができそうにも思えます。 

しかし民法249条は、「各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」と規定しています。
即ち、当該共有物の共有持分権を有するものは(持分に応じたという限定文言はあるものの)当該共有物の全部を使用することができるのです。 

よって、本件の遺産である土地・建物の共有持分権を有している太郎が、土地・建物の全部を独占していても、これは正当な使用権限の行使の範囲内であり、二郎の太郎に対する建物明渡請求等は認められないという結論になります。 
なお兄弟(相続人)が3人いたとして、太郎の持分が3分の1に過ぎない状況で、他の2人の相続人から明渡請求等をされた場合でも、この結論は変わりません(最高裁判所昭和41年5月19日判決参照)。
とにかく、一部でも共有持分権があれば共有物の全部を使用することができるという決まりになっているのです(一部例外はありますがここでは割愛します)。 


【さらなる問題】 

では、二郎は太郎に対してお金を請求することはできないでしょうか。
二郎にも共有持分権があるにもかかわらず、太郎だけが独占するのは不公平ですから、二郎にはせめて金銭を補償すべきと考えられますね。 

次回はそんな、共有者間の使用料の問題を扱ってみようと思います。 



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