大阪プライム法律事務所

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一般社団利用での相続対策に規制か

17.12.03 | 非営利・公益

2017年11月30日の日経朝刊に、政府・与党は相続税の過度な節税防止に乗り出すという記事が出ました。一般社団法人を設立して相続税の課税を逃れたり、住宅を贈与して宅地にかかる相続税を減らしたりする節税策が広がっており、2018年度税制改正で具体的な対策を講じるという内容です。相続税は15年から始まった増税で課税対象となる人が増えており、節税策を封じて課税の公平性を確保するということのようです。
以前にも、一般社団法人・財団法人を使った相続対策を指南する税理士セミナーなどが増えてきたことを紹介しましたが、そのような動きも止まるかもしれません。

■以前にここで、一般社団法人・財団法人を使った相続対策を指南する税理士セミナーなどが増えてきたことや、「税経通信」の最新号(2015年5月号 Vo1.70/No.5 通巻996号 税務経理協会発行)が、「一般社団法人・財団法人による相続対策と課税リスク」と題する特集を組んでいることなどを紹介しました。 

その際には、なるほど、この法人制度を相続税対策としてこのように活用するのかと、生み出されるアイディアと人間の欲望の深さに感心し、法人制度は社会の道具だから、いろいろな使い方も自由なのだと改めて思いました。ただ、このようなスキームは、将来の税改正リスク、税務当局による課税認定、法人内での相続争いや財産管理紛争リスクといったリスクがあるように感じていました。特に、将来の税改正リスクという面は、節税の弊害が目立つようになると、必ず生じると思っていましたが、早くも到来したかという気がします。 

■その予感は的中したようで、日経の記事では、「一般社団法人の問題は放置できない」と、自民党税制調査会の宮沢洋一会長が社団法人を使った節税を問題視する発言を紹介しています。 

日経記事では、一般社団法人では、役員の人数や親族の割合に関する定めもなく、比較的容易に設立できる面がある仕組みを悪用して節税に使うケースが増えているとして、ある手法を紹介していました。 

まず親が代表者となって一般社団法人を設立し、そこに親の個人資産を移す。その後に子供をその法人の代表理事に就かせ、法人の支配権を継承する。そうすることで、移した資産には相続税がかからないというものです。
これは、一般社団法人には出資持分の概念がないことを理由としています。そのため、親から子へ社員が変更(支配権の変更を)した場合も無税で承継できるのです。この点は、株式会社などの普通法人であれば、株主の地位を承継するためには株式の相続・贈与や譲渡によって、それぞれ相続税や贈与税、所得税が課税されてしまうのと大きな違いがあります。 

■こういった一般社団法人の仕組みを使えば、子供ばかりか、孫やその先の代まで、延々と非課税で資産を相続できるという旨味があることになります。しかも、法人設立にかかる費用は登記の6万円しかかからず、登記だけで簡単に設立できる点が節税策として活用される一因になっているともしています。そのために、真面目にそういった策をとらずに通常に納税をする人との著しい不公平が生まれてしまいます。

このためか、税収に悩む政府・与党は、親族が代表者を継いだ場合、非課税の対象と見なさず、課税対象とする方向で検討を進めることにしたようです。自民党の具体的な改正案についてはこれから注視する必要がありそうです。 

ドイツなどでは親族で世襲していくような社団や財団については、30年ごとに法人に相続税を課税する制度になっているようですので、将来的にはそこまで制度が変化していくかもしれません。

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