税理士法人SKC

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私の今年の重要な出来事

17.12.26 | 堺俊治の独り言的情報

私が印象に残った今年の経済関連の出来事について書き出してみました。

1.労働生産性が先進国中最下位

2.日経平均株価がバブル以来の最高値更新

3.景気拡大期間57ヶ月でいざなみ景気超え

4.訪日外国人2,900万人超え

5.有効求人倍率が1.55倍となりバブル期の1.46倍を更新

 働き方改革が政府主導によって進められています。この政策の一端に、日本の生産性が低いことがあるようです。今年発表の2016年の就業者一人当たりの生産性は年当り834万円で世界第21位です。米国1,255万円、英国とカナダ902万円、第1位はアイルランド1,722万円、この40年間以上常にトップだったルクセンブルクが1,472万円でした。トップのアイルランドとは倍以上の差です。GDPは世界第3位の日本なのにです。

 生産性が悪いと聞くとメディアを筆頭に、働き方に問題があるような主張がよく聞かれます。多くの評論家が、もっと効率的な働き方が求められるとか、無駄な残業をしているとか、もっとITを活用して働き方を改革しなければならないとか語っていますが、私はどうしてもこの主張に納得できず、どう考えても日本人が西欧人より怠けていたり、非効率的で無駄なことをしているようには思えなかったのです。そこで、いろいろ調べてみました。

 この国別の労働生産性の算式は「GDP(購買力平価に換算)÷ 就業者数」です。購買力平価というのは、国ごとの物価水準を考慮した通貨の購買力に換算したものです。就業者数が少なければ労働生産性が上がります。GDPが大きければ労働生産性は上がります。ということは、労働力を使わずに売上が上がれば生産性がよくなるということです。それはどんな業種でしょうか。判りやすいのは不動産業、金融業、観光業とかですね。昨年トップになったアイルランドは1980年までは日本と変わらないくらいでした。2000年くらいから、主要国の中でも極めて低い水準に法人税率を抑えることで米国企業を中心に欧州本部や本社機能をアイルランドに相次いで呼び込むことに成功し、高水準の経済成長と労働生産性の上昇を実現しました。特に昨年は米国IT企業が世界中で上げた利益や知的財産権を集中的に会計上だけアイルランドに移動させた結果のようです。実体経済が変わった訳ではないようです。ルクセンブルクも古くから法人税を抑えてグローバル企業を誘致し、金融業、不動産業が産業構造の中心となっているようです。米国や英国も金融業が経済の大きな割合を占めています。そのうえ、調べてみると労働生産性の計算の分母である就業者数には外国人労働者は含まれないことになっています。米国やドイツでは多くの外国人労働者で製造業は支えられているんではなかったでしょうか。

 どうも、日本が労働生産性を上げるためには、「働き方改革が必要」ではないような気がするというのはお判りいただけたでしょうか。生産性が上がらない最も大きな理由は、あぶく銭を稼ぐことを良しとしない日本人気質ではないでしょうか、と締めたいところですが、大きな要因はデフレで消費が落ち込んでいることのようです。もはや、若者は車を欲しがらないし、結婚しようともしない、まるでこんな若者の生きざまは「足るを知る」という教えのようです。「生活の満足度」調査の結果、73.9%が満足(ほぼ満足を含む)と答えているのです。これ以上お金を使って満足を得ようという気はないと言っているようにも聞こえます。

 有効求人倍率は、バブル期の1.46倍を超えて1.55倍にまでなっています。 失業率は2.8%、米国やドイツの失業率は4%前後ですし、他の先進諸国は4%を優に超える失業率です。分母は就業者数ですよね。日本では分母が増えても(今後は少子化で減少か?)、確実に景気は拡大しています。大した実感はありませんが、いざなぎ超えで景気は拡大中ですし、訪日外国人も3,000万人に達するまで増加しています。観光業の拡大は確実に生産性を上げます。

 日本のその辺のところをよく判っている、生産性を上げるのにあぶく銭を稼いで一役も二役も買っている外国人富裕層の投資家が日本株の6割以上を買っているそうですから、日本株も上がっているわけです。

 今年は、いずれの中小企業の皆様と同様に、弊社においても求人に大変苦労しています。これだけ苦労すれば、来年はもっと知恵を使わなければならないと、いずれの経営者の皆様も思われるでしょうから、おのずと来年は人の使い方(働き方改革というより)改革を必要とすることだと思います。

  この一年、この私のコラムにお付き合いいただきました皆様、ありがとうございます。来年もまたお付き合いのほどよろしくお願いいたします。良いお年をお迎えくださいますよう。

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