TFSグループ/TFS国際税理士法人 理事長 山崎 泰

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「緊迫した時だからこそ、上海に来てよかった・・・」

14.05.30 | 【バックナンバー】山崎泰の月刊メッセージ(2014年5月まで)

2012年11月12日18:41:00

■怖いもの知らず・・・


 上海決死隊報告の続き・・・。 
 先日、上海駐在の日本人の方が一時帰国されて、当社に立ち寄られました。
 なんと、その席で初めて知ったのですが・・・私達が上海に到着する前日、上海市内で防空訓練が行われていたというのです。

 9月15日、午前11時30分~12時の間、上海市内で5分間×3回。防空訓練と称するけたたましい防空サイレンが、市内中に鳴り響いたとのこと。
 外国人でも、中国の携帯電話を持っている人には、上海市人民政府通告として、防空訓練が行われる旨の緊急メールが、ショートメールで一斉配信。
 帰国直後の日本人駐在員の生々しい話が続きます。

 「私は、中国携帯電話を持っていて、訓練とわかっていたのでまだ良いほう。それでも戦時を想起させて、本当に怖かったです。それにしても中国携帯を持たず、まったく事情を知らない外国人は、いったい何事か?戦争でも起こったのか!と、本当に怖かったと思います。」

 私達が、前日に上海に入っていたら・・・と思うと、ゾッとします。
前日に、そんな騒動が起きているとも知らずに・・・緊迫した上海へ。

■18日未明に、上海人民政府から突然キャンセルの連絡が・・・


 9月18日未明、ホテル自室の電話がなりました。
 「蘇州人民政府から、安全面を考慮して蘇州工業団地には来ないでください。
視察予定先の社長も、身の安全を考えて上海に戻りました、との連絡が来ています」との報告を受けたのです。
 
 一瞬、頭の中が真っ白になりかけましたが、
 「想定内のできごと。こういう時こそ、落ち着いて冷静な判断を下さなくては」と気持ちを静めて、少し仮眠をとりました。
 当然ながら、朝6時、7時になっても状況が変わるものでもありません。
 座席指定している和階号の上海駅発車時刻は、8時38分。7時30分にはバスが迎えにきます・・・さてどうするか?


■困っても近づけない、上海総領事館
 
 上海総領事館から提供された情報を、もう一度読み直してみると・・・
 
 上海市デモ
 10時開始⇒13時日本総領事館着
  1ルート)人民広場→延安路→仙霞路→日本総領事館
  2ルート)外灘陳毅広場→延安路→仙霞路→日本総領事館
  3ルート)准海路→東湖路→富民路→延安路(上海展覧館)→日本総領事館
 
 ○外出する際には、周囲の状況に格別の注意を払い、広場などの大勢の人が集まるような場所や深夜の外出は特に注意する。
 ○実際に集会やデモ行進が行われている現場には、極力近寄らない。
 ○公衆の場での言動や態度に注意する。
 ○日本人同士で集団で騒ぐ等の、目立った刺激的な行為は慎む。
 ○急の用務等、特段の事情がある場合を除き、日本総領事館周辺には近づかない。
 ○一人でタクシーに乗ることは、できる限り避ける(日本人の乗車拒否等が散見されている)。

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■一同無言で、和階号に乗り込む???

 午前中は、上海で大きなデモ。午後には蘇州で大きなデモ。
 まさに今日18日は、満州事変の発端となった柳条湖事件勃発の日。

 現地旅行会社スタッフとも打ち合わせて、大きなデモを避けるように、午前中は上海のデモを避けて蘇州に向かい、午後は上海が落ち着く頃を見計らって戻ってくる、という行程を組みました。

 もちろん蘇州での企業視察は中止。日系企業が集積する地区は、デモに遭遇する危険性があるので近づかない。
欧州人も含めた外国人観光客がよく行くような名所旧跡等の観光地訪問に切り替え・・・そんな結論に。
そして日本総領事館からの注意事項を、再度全員で徹底。
バスから降りて、駅前広場でも一同ほぼ無言。上海駅で和階号に乗り込んだのです。

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■最前線で頑張っている日系企業から、悲痛な悲鳴が・・・
 

 蘇州からは、なんとか無事に帰って来られたのですが、上海日本総領事館周辺の日系企業からはなんとも悲痛な叫び声が・・・。

 上海市を中心として中国国内で幅広く飲食店・飲食流通業を営む日本人経営者。

 岡山県出身で、冷凍食品の運搬等を扱う船会社を経営していたのですが、上海に進出して、2002年に大手冷凍食品メーカーの中国での販売代理をスタート。
 昨年だけで200店舗以上の中国での飲食店新規開業をサポート。なんと中国進出日系飲食店の8割近くが、この会社のお世話になるといいます
。大手水産メーカーとも業務提携して、冷凍食品1個からでも翌日配送できるシステムを作りあげ、飲食業界に多大なる貢献をしています。
 上海、蘇州はじめ中国国内の百貨店にも出店して成功を収め、上海万博では7つしかない万博の指定店舗にも選ばれたほど。
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■なにも日中国交回復40周年の年に、国有化しなくても・・・
 
 「日本に帰ったら、上海で仕事をして苦労している声を、日本の政治家や外務省に伝えて欲しい」
 「野田総理も、なにも国交回復40周年の年に引き金を引かなくても・・・記念行事中止が相次ぎ、経済的には大きな取り返しのつかないダメージ」
「石原都知事にも伝えて欲しい。尖閣諸島ではなくて、ここ上海市に来てみて欲しいと。」
 上海総領事館周辺だけとってもみても、5㎞圏内で日本人1万人在住。日本人学校に通う生徒3千人。日本人教師80人。ほとんどの学校で運動会等の行事も中止。
 大人も子供も、本当に大きなダメージを被っています。

 外交の巧拙が、海外進出している最前線の現場経済に大きな影響を与えることを、胸が痛くなるほど感じた、日系企業経営者との意見交換
 帰国報告方々、外務省秘書官にすぐ電話。外務大臣にも伝えて欲しいと、上海での約束通り、最前線の生の声を伝えました。

 できることなら政経塾以来の同志でもある、玄葉光一郎・外務大臣に直接伝えたかったのですが・・・。


■緊迫時のビジネスリスク、平時のビジネスリスク


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 日中関係緊迫時ゆえ、中国市場進出リスクは高まりつつありますが、日頃から交流している上海開澤法律事務所の王穏弁護士・齋藤彰顧問から、平時のビジネスリスクに関するレクチャー。

①会社設立
・大手企業⇒ヒト・モノ・カネの3要素が備わっており、時間の多少はあるが、問題なく設立できる。
・中小企業⇒ヒト・モノ・カネの3要素のうち、ヒト・カネが弱い。
・カネは、自己資金が乏しく、第三者等の資金に頼ると失敗しやすい。
・モノは、特徴ある技術や製品が不可欠。

②IT企業等の会社設立
・中国で事業拡大しようとする日系企業にとって、避けては通れないのが人材のリスク。
・日本と比べて企業への帰属意識が希薄。高い離職率、IT部門の人員不足附が顕在化している。
・ポイント⇒「小さく産んで大きく育てる」「まずは業務委託から始める
③中国での起業目的と生活、考え方
・中国で事業を始める目的はなにか?
・人件費高騰、政治リスク等で、中国よりもベトナム・ミャンマー・フィリピン・タイ・インドネシア等の東南アジア方面へ関心が移っている。
・今や安価な労働力を目的とし、日本等へ輸出する目的は難しい。むしろ中国へ売り込み、実際に利益の出る事業を考えるべき。

・だます側も悪いが、だまされる側はもっと悪い。近づいてくる日本人には要注意。
・その他のリスク⇒突然の停電・突然の検査・検査時の対応
 余談ながら、レクチャー後の意見交換で、日中を往復される斎藤彰顧問が、日本の公共交通機関は高すぎると指摘。海外との往復をしていると、まさに強く感じる点です。
 齋藤顧問曰く、大連⇔成田空港 5千元(6万5千円)、成田空港⇔鎌倉間9千円、鎌倉⇔東京間 2千円。さらに、日本のタクシー代がいかに高いかは、海外経験のある方なら実感されていることと思います。円高に加えてこれだけ交通費が高いと、日本の観光政策にも大きく影響すると思うのです。
 ちなみに上海では、バスは2~4元(25円~50円)、タクシー初乗り14元
(180円)。上海での大卒初任給は3千~4千元(4万円~5万円)。


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■中国社会は、少年サッカーと似ている・・・そのココロは!?

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 上海レポートの締めくくりに、もう一度小島成樹・NAC名南総経理の話に戻ります。
 私の息子も、小学生の頃サッカーに熱中している時期があり、土日の度に応援に行ったのを覚えています。

 (あまり上手でない)少年サッカーを思い浮かべてみてください。
 一ヶ所にボールが落ちると、どうなりますか?敵も味方も、フォワードもバックも、みんな一目散でボール目がけて走っていく。
中国社会も、株が良いと聞くと掃除のおばさんまで、株に目がけて投資する。
不動産が良いと聞くと、猫も杓子も不動産。絵画・骨董品・切手等々・・・中国人は利殖が大好きで、儲かると聞けば一目散に集まってくる、というのです。
 
 
■中国の自殺者は年間30万人、日本の10倍。

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 中国でのケーキ小売価格を載せておきましたが、この相場観をみると日本との比較がしやすいと思います。ちなみに中国人にとって、ケーキは誕生日に食べるもの。

 雇用に関しても、残業はしない。残業などする人はアホだ思っている、といっても過言ではないかもしれません。娯楽は麻雀、将棋、インターネット、TV、国内旅行等々・・・家から出ずに、ネットで買い物をすべて済ませてします若者の姿も。
 それゆえ、TVショッピングも盛んで、家具・ファッション・貴金属・ダイエットまで。

 しかし急激な社会変化ゆえ、中国の自殺者は年間30万人、日本の10倍ともいわれます。今の25歳以下の中国人は、一人っ子世代ゆえ。ストレス耐性がないとも指摘されています。

 また、「国家」「地域」「個人・家族」という区分けが、日本では一般的。会社は、「国」でも「個人」でもないという意味で、「地域」に位置付けられるでしょうか。

 しかしながら中国では、「国家」⇔「個人・家族」というように、「地域・企業」への帰属意識が薄く、一足飛びに「国」と「個人」との意識関係に落とし込まれてしまいます。
中国政府が、過度なくらいに世論動向を気にするのも、こうした「国」と「個人」との心理的距離感が近いという国民性も大きく影響しているのでしょう。


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■中国事業成功のポイント!

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 そして最後に、小島総経理が上海で作成してくれたパワポです。

 ①~⑩の10項目に、中国事業成功のポイントが網羅されています。

 あえて補足しておくならば・・・中国人は、お世話になりたい人に投資する。
日本人は、お世話になった人に投資(御礼)する。

 そして今の日本人と中国人の大きな違い!
 日本人は、「実力」より悲観し過ぎ。
 中国人は、「実力」より楽観し過ぎ。

 日本人は、自らの実力とともに隣国・中国に貢献してきた歴史に対して、もっと自信と誇りをもって進むべきです
 
 
■緊迫したときだからこそ、上海に来て良かった・・・


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 最終日、空港へ向かうバスの中で、中国人ガイドも前に、日本から参加された皆様に最後に私からこんな挨拶を申し上げました。
 「1978年、当時の鄧小平・副首相が来日。大阪の松下電器の工場に、経営の神様・松下幸之助翁を訪ねて、熱心に工場見学をしました。鄧小平氏は、率直に松下幸之助氏に教えを請います。」
 「中国の発展、中国の近代化には、どうしても日本の技術力が必要です。そのための教えを請いに参りました。」
 「率直な鄧小平氏に心打たれて、快く協力を約束した松下幸之助氏。鄧小平氏は、松下幸之助氏に中国訪問を招聘するのです。」
 「翌1979年、松下幸之助氏は約束通り訪中。まさに“君子の再会”。 そこで、中国でのブラウン管 技術協力を約束するのです。」
 「ここが、中国近代化への原点であり、今日の中国経済発展の礎といっても過言ではありません。」
 
20121121

 私が言いたかったこと…
 中国の近代化には、日本の尽力があったこと。
 中国発展の陰には、アジア発展のためには、日本のみならず中国もともに発展しなければ、という大局観をもった日本人経営者がいたこと。
 アジアを支える隣人同士、ともに成長発展する知恵を絞る責務が、今を生きる我々にはあること。 
 
 目を見開いて聞いてくれていた中国人ガイドの真摯な眼差しに・・・仕事を超えた、国籍を超えた人としての“なにか"を感じたのです。
 緊張あふれる時だからこそ、上海に来て良かった・・・
 心底そう思った瞬間でもありました。
 
20121122
 
                 平成24年(2012年)11月
山  崎   泰

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