宮田総合法務事務所

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『家族信託』を“親なきあと問題”の対策として活用する!

18.03.27 | 暮らし・人生にお役に立つ情報

巷で話題の『家族信託』。

今回は、老親の認知症対策や争族対策とは違った、また別の『家族信託』の活用事例のご紹介です。

それは、障害(知的障害や精神障害、自閉症など)のある子を抱える家族のためのお話です。

障害のある子の“親なきあと”をサポートする仕組みとして

鈴木太郎さん(65)と妻・華子さん(68)との間には一人息子・一郎さん(33)がいますが、一郎は先天的な知的障害があり、一般就労できるほどの判断能力はありません。
太郎さん夫妻が元気である現在、一郎さんは自宅で両親の庇護のもと、作業所に通いながら安心して暮らせています。
しかし、この先10年後、太郎さん夫妻が高齢化し、一郎さんの生活を同居しながら支えることができなくなった後のことが心配でなりません。
太郎さんは、一郎さんも含めた家族全員が亡くなった後に残った資産があれば、それを一郎さんがお世話になった障害者施設を運営する社会福祉法人に寄付して、有効活用してほしいと思っています。

成年後見制度と家族信託を併用する


太郎さんは、将来に備え信頼できる法律専門職を探し、今から一郎さんの法定後見人に就任してもらいます。
また同時進行で、太郎さんを「委託者兼当初受益者」、近くにいて最も頼れる親戚・鈴木大輔さんを「受託者」、一郎さんの後見人の司法太郎司法書士を「信託監督人」として、信託契約を締結します。

その内容は、太郎さんの老後の財産管理を受託者・鈴木大輔さんと信託監督人・司法太郎さんが相談しながら行うというものです。
また、太郎さんの死後は、「第二受益者」を妻・華子さんにし、華子さんの老後の財産管理も同様に家族信託の仕組みの中で行います。
さらに、華子さんの死後は、「第三受益者」を一郎さんにして、一郎さんの生活・療養に必要な資金は、受託者たる大輔さんから後見人に随時給付するようにします。
また、太郎さん夫妻と一郎さんの全員の死亡した時点で信託を終了させ、残った財産(信託の残余財産)を社会福祉法人に寄付するように規定しておきます。


遺言の書けない子に代わって資産承継の指定もできる


太郎さんや華子さんの存命中は、司法太郎司法書士が一郎さんの後見人業務と、受益者のため信託監督人業務を兼務し、3人家族の生活全般をサポートします。
太郎さんと華子さんが亡くなった後は、受益者となった一郎さんの後見人として、受託者たる大輔さんと連携を取りながら引き続き一郎さんの生涯にわたる生活と財産管理を担います。

一郎さんが通常の相続で両親から所有権としての財産を貰うと、遺言を書けない一郎さんの遺産は、一郎さんには法律上の相続人(法定相続人)が存在しないので、最終的に国庫に帰属することになります。

信託契約書の中で財産の行く末を父親の太郎さんが決めておくことで、太郎さん夫妻及び一郎さんが使いきれず残った財産(信託の残余財産)は、最終的に国庫に没収されることなく、太郎さん夫妻が希望するところへ寄付することが可能となり、両親の“想い”を確実に届けることが可能となります。


これこそ、遺言や成年後見制度だけでは、親の“想い”・希望を実現できない限界を、『家族信託』が補える典型的な事例です!
“親なきあと”の問題は、両親が元気なうちに、遺言と成年後見制度と家族信託等の方策(これ以外にも、「生命保険信託」「生前贈与」「特定贈与信託」などの手段もあります)を駆使して、早めにサポートの仕組むを作っていくことが重要と言えます。

 

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