税理士法人SKC

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上場企業の平均年収599万円

18.05.23 | 堺俊治の独り言的情報

 東京商工リサーチが今月、2017年「上場2,681社の平均年間給与」調査の結果を発表しました。2017年決算(1月-12月)の全証券取引所の上場企業を対象に有価証券報告書で平均年間給与を抽出したものです。それによりますと、上場企業全体の平均年収は599万円(前年比0.6%増)で、2011年に調査を開始以来、6年連続で前年を上回っており、業種別の平均給与では、 最高が建設業の695万円(前年比2.7%増)で、2年ぶりにトップに返り咲いています。最下位は475万円(前年比0.8%増)で4年連続で前年を上回っていますが、7年連続で小売業です。

 東京商工リサーチの調査によると、上場企業の中で2017年の平均年収(年齢の平均は30代後半から40代前半)が最も高かった企業はM&AアドバイザリーのGCAで1,559万円です。2位は不動産業のヒューリック1,530万円。3位は朝日放送ホールディングスで1,515万円。4位はM&A仲介の日本M&Aセンターで1,418万円でした。ここ数年、時代の要請もありM&A関連の企業の業績が絶好調です。5位以下は、三菱商事(1,386万円)、伊藤忠商事(1,383万円)、ファナック(1,318万円)、住友商事(1,255万円)、丸紅(1,221万円)、10位は三井物産(1,213万円)と続き、5大商社は全て10位以内に入っています。ちなみに50位で940万円の平均給与でした。

 社員の平均年収が1000万円を超えている上場企業は29社で、その内訳を業種ごとにみると、総合商社6社、医薬5社、機械などのメーカーが4社、不動産・コンサルが3社ずつ、放送・M&Aは2社ずつ、メガバンクは1社も無くなくベンチャー投資企業が1社、ITサービス・海運が1社ずつとなっています。こうしてみると、日本の好況な業種がよくわかりますね。メガバンクや放送事業が軒並み下がっています。

 国税庁の「平成28年分民間給与実態統計調査結果」によると、2016年の民間企業の平均給与は421万円(正規486万円、非正規172万円)で、2017年の上場企業の平均給与と比べ、正規社員で1.2倍(113万円)、非正規では3.4倍(427万円)の格差があります。もう少し突っ込んで調べてみます。全企業数421万社で、中小企業の数は419.8万社 で99.7%も占めているのはよくご存じでしょう。しかし従業員数となると大企業の従業員数は31%の割合になります。大企業のサラリーマンがサラリーマン全体の31%にもなるということです。この31%の平均年収が599万円ということになります。ということはこのサラリーマン全体の平均年収が421万円ということですから、では69%の中小企業のサラリーマンの平均年収はいくらになると思われますか?
 なんと69%の中小企業のサラリーマンの平均年収は341万円となります。31%の大企業のサラリーマンが日本の年間給与総額の44%を占めています。その差は258万円で1.8倍になります。この差が年々開いています。将来的にもこの格差は開いていく可能性があります。それは外国人技能実習生受け入れ制度が影響するのではないだろうかということです。

 先月、福岡県中小企業経営者協会連合会の主催で、ベトナムの技能実習生の送り出し施設の視察に出向きました。1施設200人超の若者たちが懸命に日本語と日本の習慣を学び、それに研修先の業種の技能訓練にも取り組んでいました。ハノイの街中は若者で溢れ、ベトナムは若人の国と感じさせます。将来に大きな期待を抱いた多くのベトナムの若者群が日本で稼ぐことを楽しみに準備しています。もう既に、日本の大都市圏では、コンビニの店員の多くがベトナムの若者です。日本の労働力不足は、中小企業においてますます加速していくでしょうから、中小企業の経営者はこの技能実習生の活用を必然的に進めざるを得ません。しかしそれが、中小企業の日本の若い従業員の給与の伸びに重い蓋になりそうな気がします。働き方改革で、残業代を抑制され給与も上がらないとなれば、大企業との給与格差はますます広がりそうに感じます。それが、中小企業で働く若者の勤労意欲の減少や、モラルの低下につながるリスクがあります。中小企業の経営者にとっては、労働者不足の対策だけでなく、若者の勤労意欲と年収についてもしっかりと対策を検討しなければならない状況の様に思います。

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