大阪プライム法律事務所

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元貴乃花親方は「卒婚?」

18.12.01 | ニュース六法

元横綱で、今年の秋に日本相撲協会を退職した元貴乃花親方(花田広司氏)が、元フジテレビアナウンサーの河野景子氏と離婚していたということが報じられました。離婚届出は10月25日だそうですから、退職直後ということになります。家庭内のことですから、それ自体はどうでもいいことかと思いますが、元親方自身が、テレビのワイドショーで、このことについて、「お互い結婚を卒業しようということで、2人で決めました」と話したことが、「卒婚した」という形で報道され、その言葉が改めて注目を浴びました。卒婚というと何となく響きがいい感じを与えますが、果たしてどういうことでしょうか。

(写真:「卒婚のススメ―後半生もハッピーに生きるため結婚のかたちを変えてみる」単行本 – 2004/3 杉山由美子 (著) 現在は文庫版でのみ入手可)

■卒婚とは
Wikipediaの定義によれば、「2000年代以降の日本における夫婦生活の新しい形態の一つで、婚姻状態にある夫婦が互いに干渉することなく個々の人生を歩んでいくという生活形態のこと」で、「2004年に杉山由美子が著書『卒婚のススメ』で使用した造語」として紹介されています。

このように、一般的に言う「卒婚」は、「婚姻関係を維持する」という点で離婚とは異なっています。また、不和で冷戦状態ながらも様々な事情で同居している「仮面夫婦」「家庭内別居」とも違って、互いに納得しあったうえで互いに干渉することなく個々の人生を歩んでいくという前向きな選択とされるのが「卒婚」とも言えます。卒婚には、別居する場合と同居を続ける場合とがあります。

つまりは、「離婚」でなく「仮面夫婦」でもないスタイルの結婚生活が「卒婚」です。タレントの清水アキラ氏や、俳優の加山雄三氏も「卒婚」をしましたが、二人とも、その後の夫婦仲はいいようです。 

■今回の場合は卒婚とは言えない「卒婚もどき」
そういった一般的な「卒婚」の意味から言えば、今回の元貴乃花親方の場合は「離婚」しているので、卒婚とは言えないことになります。本人の口からは「卒業した」とだけ言って、「卒婚した」と言ったわけでもなく、マスコミが勝手に「卒婚」としてしまったのかもしれません。ただ、「結婚を卒業しようと決めた」との発言からすると、「前向きに互いの人生を歩んでいくために二人で選択した離婚」であること言いたかったのかもしれません。

これについて、景子氏も、発表したコメントの中で、「今後はお互い別々の道を歩むことといたしました。2人で話し合い下した決断です。共に歩んできた元夫への尊敬の念と感謝の心は失うことなくこれからの人生を進んで参りたいと思います」などと書いているので、双方の本心は分からないにしても、いがみ合っての離婚とは違うことを、互いに強調したかったということかと思います。いわば、「卒婚もどき」と言えるものかもしれません。

景子氏にしてみれば、よくわからない行動を繰り返して、相撲協会を突然に退職し、伝統ある相撲部屋も廃業して女将さんの立場を失ったことで、こんな夫にもはや愛想をつかし、「もう付いていけませんから、自分も勝手にします」ということではないのでしょうか。こういった「前向き離婚」がもっと広がっていくのかもしれません。 

■引退後の夫婦関係
昨年の8月8日のサンケイ新聞に掲載された記事によると、ダイヤ高齢社会研究財団が、全国の40、50代の正社員約5千人にアンケートを実施した中で、仕事を完全引退した後に希望する夫婦の関係を選択形式で尋ねた結果が紹介されていました。

それによると、「自宅では一緒だが外に別々の趣味を持つ」が男女とも最多で、ほぼ半数が選んだそうです。熟年離婚については、可能性を否定しなかった人は、男性が19・8%に対し、女性は28・9%、「そもそも理解できない」という完全否定は男性が28・5%に対し、女性は14・9%で、倍近くの意識の差があったとしています。

婚姻関係を維持しながら別居するなどしてそれぞれ自由に人生を送る「卒婚」についても、女性の32・4%が理解を示しており、男性の20・2%より多かったことが書かれていました。

当事務所にも、さまざまな家庭の事情を抱えた相談者が来られます。離婚すべきか悩まれる方が多い中で、「離婚」「別居」「家庭内別居」「仮面夫婦」などの選択肢の一つに、「卒婚」も加えて話をすることもあります。今の時代、人の生き方には多くの選択肢があります。こうでないといけない、ということもなく、自分の意思を強く持って考えていけばいいと思います。 

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