江原会計事務所

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日米の履歴書の差異から見えてくる、アメリカ流人材確保術とは?

19.05.07 | ビジネス【人的資源】

グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)など、多くのアメリカ企業が、世界時価総額ランキングの上位を占めています。 
アメリカ企業の躍進にはさまざまな理由がありますが、その一つに人材の採用方法があげられます。
人材を採用するのに必須となるのが、履歴書です。 
今回は、日米の履歴書の違いから見えてくる、アメリカ企業流の優秀な人材を確保するためのノウハウを探っていきます。

アメリカにおける履歴書の常識とは? 

日本には、手紙類は手書きをよしとする価値観が残っています。
そのため、履歴書においても、いまだに手書きのものしか受け取らない企業も多数存在します。 
しかし応募する側にとってみれば、作成に時間がかかり、修正もできない手書きの履歴書はデメリットしかありません。 

アメリカの採用の現場においては、むしろ手書きの履歴書のほうを弾く傾向にあり、基本的に応募者はパソコンのワープロソフトなどで作成した履歴書を持参、もしくは郵送することになります。 

また、書式も決まっておらず、パソコンで自由につくっていいことになっています。 
そのため、見やすくしたり、アピールしたいポイントを目立たせたりと、応募者は自分なりの工夫を凝らすことができます。 

  
アメリカでは履歴書に記載する内容も異なる 

職歴や学歴、そして応募者の連絡先などを履歴書に記載してもらうのは、日本もアメリカも同じですが、アメリカでは年齢や生年月日、性別、配偶者の有無、子どもの有無、家族構成などは履歴書に記載しないことになっています。 

なぜならば、アメリカには年齢や性別などを理由に雇用を差別してはいけないという『雇用差別禁止法』があり、履歴書に年齢や性別を書かせてしまうと、この法律に違反することになってしまうからです。 

以下、具体的に説明していきましょう。 

・年齢は記載しない 
アメリカでは、学歴は記載する必要がありますが、入学年や卒業年を記載する必要はありません。履歴書からその人がいつ生まれて、高校や大学をいつ卒業したのかは知ることができないようになっています。 

日本では人材採用の場において、いまだに新卒が優遇されていますが、アメリカでは、何歳であってもチャンスが与えられなければなりません。 
就職を希望すれば、40歳だろうと、50歳だろうと、新卒と同じ立場で企業に応募できるというわけです。 

・ 配偶者や子どもの有無は聞かない 
日本では、家庭環境が仕事に与える影響を考え、特に女性に対し、婚姻状況や子どもに関しての質問をしたがる傾向にありますが、アメリカではこれらを直接聞くことはできません。 

・顔写真は貼付しない 
日本ではスーツ着用のきっちりとした顔写真が必要ですが、アメリカでは、人種や人相で差別しないように顔写真の貼付も禁止されています。 

・趣味や特技を記載しない 
アメリカの履歴書には趣味や特技も記載する必要がありません。 
もちろん募集している仕事に役立つためのスキルなどを掲載することは問題ありませんが、それ以外の仕事とは無関係の事柄については記載しません。 

このほか、前職の給与や前職の退職理由、現在の健康状態や国籍、民族なども同様で、履歴書に記載してはいけませんし、面接時に聞いてもいけません。 
アメリカは訴訟大国でもあり、企業側がこれらに違反すると、応募者から訴訟を起こされる可能性もあります。 


アメリカならではの履歴書への記載項目 

逆に、日本の履歴書にはない項目や添付書類もあります。 
それが、『Reference(レファレンス)』『Cover Letter(カバーレター)』です。 

まずReferenceとは推薦人のことで、通常、2~3人の推薦人の名前と連絡先を記載します。 
企業側は履歴書に書かれた推薦人に連絡を取り、応募してきた人物が自社にふさわしい人間かどうかを推薦人に尋ね、判断材料にします。 
推薦人は家族以外の第三者であれば、友人や知り合いなど誰でも構いませんが、前職の上司や同僚などの場合がほとんどです。 

Referenceは必ずしも記載しなければいけないものではありませんが、推薦人が0人の応募者と、推薦人が3人の応募者であれば、当然、推薦人の多い応募者のほうが有利になります。 

次にCover Letterですが、これは、日本でいう添え状のようなものです。
日本では履歴書とは別に職務経歴書をつけますが、アメリカではこのCover Letterが、応募の際にはなくてはならない書類です。 

簡単に言ってしまえば、Cover Letterとは企業の面接官へ自分をアピールするものです。 
応募動機や経緯、さらに自分のスキルや経験などの自己アピール、入社後にどのように貢献できるかなどをつづります。 
企業の採用担当者は、履歴書とこのCover Letterをもとに、面接を行うかどうかを判断します。 

   
アメリカのよい面を取り入れてみては? 

この日米の履歴書の差異から見えてくるのは、アメリカがいかに実力主義かということです。 
就職するにあたって、年齢も性別も新卒かどうかも、まったく関係ありません。 

企業が重視しているのは、その人の『過去の経験やキャリア』と『自身のスキルで何ができるか』と『将来の希望』だけです。 
このポイントをしっかりとおさえて、企業の望む答えを出せる人は、何歳であろうと採用されますし、男性でも女性でも就きたい仕事に就くことができます。 

日本企業の採用現場は、必ずしも優秀な人材だけを採用するというシステムにはなっていません。 
応募者にとってはありがたいかもしれませんが、優秀な人材を確保することは各企業の課題でもあります。 
もちろん、履歴書をアメリカ式にするのはむずかしいでしょう。
そのためたとえば、『パソコンで作成した履歴書も受付可とする』『履歴書と一緒にCover Letterを提出してもらう』『40代、50代にも応募のチャンスを与える』など、採用の現場でアメリカ流を一部取り入れてみてはいかがでしょうか。 


※本記事の記載内容は、2019年5月現在の法令・情報等に基づいています。

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