税理士法人SKC

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持続可能な社会の実現

19.06.27 | 堺俊治の独り言的情報

  「持続可能な社会」というワードを最近よく耳にします。これまで人類は経済発展を大目標にしてきましたが、いよいよこれまでの経済活動の在り方が限界に来たということを意味しているのでしょう。逆説的に言えば、これまでのような経済活動を続けていくと人類は持続不可能な状態に陥ることを警告されているといってもよいでしょう。カタカナで持続可能を「サスティナビリティ」といいますが、この言葉も最近よく耳にしますね。

   2015年9月に国連に加盟国する全193ヵ国が合意して、2030年までに持続可能な社会の創造のための17のゴール(達成目標)を決めました。その名称が、「Sustainable Development Goals」といいます。それが通称SDGs(エス・ディー・ジーズ)といわれているものです。直訳すると「持続可能な開発目標」で、そこには、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにするという願いが込められています。その前身には、2001年に策定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」がありました。MDGsは、途上国の問題解決のために定められた目標でした。しかし、その後、環境汚染や気候変動は深刻化し、大きな自然災害が頻発、経済的格差、貧富の差の拡大などが進み、これからの地球的問題として、先進国を含めた地球規模で取り組むべきものであるため、SDGsは全ての国が関わる普遍性を持った目標として策定されました。
 SDGsは、「誰一人取り残さない」という壮大な理念のもと、17つある目標と、それを達成するための具体的な169の行動目標が立てられています。広範囲にわたる目標を達成するためには、政府と民間の力を結集して取り組む必要があります。北九州市が国内で初めて「SDGsモデル都市」としてOECDから選らばれたのは、市の職員を派遣しての、カンボジアでの上下水道技術支援事業が評価されたからの様です。
   企業経営にとっては、17の目標に沿って幅広い分野で取り組みが進むことによって、新たな需要が生まれるという期待がありますが、地元の中小企業にとって、SDGsモデル都市がどのようなビジネスチャンスをもたらすのか未だに見えてはいないというのが現状でしょう。あるいは、SDGsについて用語としての認知はしているし気にはなっているが、「目の前の課題解決が先」というのがビジネスパーソンの本音でしょうか。

   現在、北九州市にIR(統合型リゾート)を誘致するために推進協議会を組織して活動していますが、このリゾートをSDGs型リゾートとしてモデルIRに出来れば素晴らしいだろうなあと考えています。循環型のゴミを出さないスマート・リゾートあるいは、クリーン・アース・リゾートとして、北九州市のSDGs活動の象徴にしたいものです。
   北九州市には、日本の企業よりヨーロッパの企業が先に注目して、提携や投資をしている(株)日本環境設計という北九州市発祥の世界注目の会社があります。この会社のビジョンは「あらゆるものを循環させる」(http://www.jeplan.co.jp/ja/)というものです。そしてこの会社が北九州市のIRに全面協力して、循環型のIRを目指そうとしています。世界が注目している会社が、クリーンでスマートなIRを目指すとなれば、大きな注目を浴びることになるでしょう。

   日本では、SDGsを経済成長につなげようという動きもあります。国の動きを追うと、2016年12月に、「SDGs実施指針」が発表されました。この指針では、SDGsの17ある目標を参考に、日本が取り組むべき優先分野を「あらゆる人々の活躍の推進」「健康・長寿の達成」「成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション」「持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備」「省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会」「生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」「平和と安全・安心社会の実現」「SDGs実施推進の体制と手段」の8つにまとめました。
 こうした国の動きを受けて、経済界も敏感に反応し、日本経済団体連合会は、企業が実践するべき指針をまとめた「企業行動憲章」に、SDGsを達成することを明記しました。
 国や経済界を挙げてSDGsの普及が進む中で、中小企業はこれからどのようにSDGsと向き合えばいいのかの答えの一つが、働き方改革への対応なのだろうと思います。働き方改革も、日本が取り組むべきSDGsの優先分野「あらゆる人々の活躍の推進」から生まれています。これは法律として決まりましたから、やらざるを得ませんが、働き方改革による残業規制などは、中小企業にとっては、達成すべき目標というより、大きなリスクを抱えた、といった方がいいように思えるのですが、皆様はいかがでしょうか。

 

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