宮田総合法務事務所

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民事裁判のIT化で審理期間1/3へ

19.09.09 | ビジネス・事業経営にお役に立つ情報

2019年9月4日の日本経済新聞朝刊の記事によると、最高裁や法務省が参加する研究会が、民事裁判の審理を半年以内に終える新制度を検討している、とのこと。

2018年に終結した一般的な民事裁判では、第1回口頭弁論から証人尋問を経るなどして結審までに要した期間は、最高裁の統計によると平均16カ月
平均で1年を超える訳であるから、当然数年以上の長期に争われる場合も多い。

新制度は、裁判のIT化を前提にしており、これにより、提訴や審理の電子手続き化が進んでいるシンガポールや韓国を追いかけたいところ。
新制度では、当事者双方が合意すれば主張や争点を絞り込むことができ、争いの無い証拠調べは減らすことで審理を効率化する。

審理の短縮化は、個人が起こした訴訟において迅速な被害救済などにつながるメリットが見込まれる。
一方の企業にとっても、企業同士の損害賠償訴訟などにおいて、訴訟終結までの期間が見通しやすくなり、経営への悪影響に備えやすくなるメリットが生まれる。
例えば、部品の納品遅れを巡る企業間のトラブルで、事実関係に争いはないものの、逸失利益の算定方法で折り合えないケースなどで利用が想定される、という。
当然、訴訟期間の短縮化で訴訟費用も圧縮できる。


審理期間の短縮に向けた具体策としては、訴状や裁判関係の書類のウェブ提出を義務付け、あらかじめ争点を絞り込み、短期間で集中的に審理する。
書面の提出は3通までとし、文字数やページ数も統一することを想定している、という。
ただし、争点を大幅に絞り込む訴訟活動には、高度な法律知識が必要となるため、代理人弁護士を立てない、いわゆる「本人訴訟」は対象にならないようだ。


最高裁は、迅速な訴訟に向けた裁判のIT化を2023年度以降の完了を目標に3段階に分けて進めており、現在は第1段階としてウェブ会議の活用などを進めているようだ。次の第2段階では、訴訟関係者が出頭しないで口頭弁論で進めるオンライン化などを目指す。
第3段階では、ウェブ上での提訴や記録閲覧などを導入を目指す。
新制度は、この第3段階の完了に合わせた導入し、審理期間を通常の3分の1程度に短縮して結論を出す仕組みを目指すという。 


裁判員裁判の導入による刑事訴訟制度の改革については、その成否について様々な意見があるが、民事裁判の迅速化については、恐らくほとんどの個人・法人にとって賛成する方向性であろうから、きちんとした制度の早期実現が望まれる。


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