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私有地の駐車場に無断駐車をしたら、罰金を支払うべき?

19.04.11 | ビジネス【法律豆知識】

市街地を歩いていると、私有地の有料駐車場に「無断駐車は罰金3万円申し受けます」などと書かれた看板が掲げられているのを見ることがあります。
このような看板がある場合、無断駐車をしたら本当に3万円を支払わなければならないのでしょうか。
今回は、看板の通告の法的な効力を考えてみましょう。

一方的な通告だけでは金銭の支払義務は発生しない 

まず、法的な意味での“罰金”とは、国が犯罪を行った者に対し、法律に基づき、一定額の金銭を国庫に納付することを強制的に命じる刑罰の一種です。よって、一般人が一般人に対し、刑罰としての“罰金”を科すことはできません。 
ということは、このような看板における“罰金”とは刑罰ではなく、駐車場のオーナーが、無断駐車をした者に対し、無断駐車により発生した損害について損害賠償を請求する趣旨といえます。 
では、駐車場のオーナーが損害賠償額を事前かつ一方的に決めておくことはできるのでしょうか。 
当事者間に意思の合致がある『契約』においては、契約を約束通り履行しなかった場合(債務不履行)の損害賠償額を、当事者間の合意により、あらかじめ契約の中で決めておくことができます(『損害賠償額の予定』、民法420条)。 
しかし、駐車場のオーナーと無断駐車をした者との間には意思の合致がなく、『契約』関係にありません。 
そもそも契約関係にない以上、駐車場のオーナーが一方的に『罰金3万円』を通告する看板を掲げたとしても、これを契約当事者間の『損害賠償額の予定』とみて、無断駐車をした者に3万円を請求することはむずかしいでしょう。 
なお、「看板を見て『罰金3万円』を承知で駐車したのだから、3万円払って駐車するという契約が成立しているのではないか」という反論もありそうですが、看板を見て駐車したというだけで、駐車場のオーナーとの意思の合致による契約の成立まで認めることは困難です。 


無断駐車に高額の損害賠償を命じた判決も 

とはいえ、たとえ契約関係になくても、他人の所有物を勝手に使用してその所有者に損害を与えた場合、民法上の不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)が発生します。 
『損害』とは、個々の事案において通常生ずべき損害をいいます。
そうすると、無断駐車1回一律3万円というような請求はむずかしいとしても、駐車場のオーナーは、無断駐車をされた時間の長さに応じて、周辺駐車場の相場の料金と同額程度の損害賠償を請求することが可能になります。
ただし、請求にあたっては、無断駐車をしていた時間の長さをしっかり記録するとともに、車のナンバーを控えるなどして、相手方を特定しておくことが必要です。 

無断駐車をめぐるトラブルが裁判にまで至った事例としては、コンビニのオーナー(原告)が、店舗の駐車場におよそ1年半にわたってほぼ毎日、延べ1万時間以上無断駐車をしていた男性(被告)に対し、1時間あたりの駐車料金を約700円として損害賠償、慰謝料等を求めた訴訟があります。
この訴訟では2018年7月26日、大阪地裁は、被告に損害賠償、慰謝料、弁護士費用を含めたおよそ920万円の支払いを命じる判決を下しました。
判決では、原告が再三注意したにもかかわらず、被告がそれを無視して長期間にわたり無断駐車を継続したことに加え、途中からさらにもう1台を無断駐車していたこと等、被告の行為の悪質さが重視されたようです。 
きわめて珍しい判決ではありますが、悪質な無断駐車に対して裁判所が厳しい態度を示した判決として、注目を集めました。 
駐車場のオーナーによる一方的な通告で、ただちに高額な罰金の支払義務が発生することはありませんが、駐車時間と周辺駐車場の相場に応じた料金の支払を求められたり、悪質な場合は、高額の損害賠償や慰謝料を支払う義務が生じたりすることもありえます。無断駐車はしないようにしましょう。 


※本記事の記載内容は、2019年4月現在の法令・情報等に基づいています。

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