宮田総合法務事務所

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事業承継における個人保証を条件付で免除に

19.11.11 | ビジネス・事業経営にお役に立つ情報

2019年11月9日(土)の読売新聞の1面TOP記事によると、政府は、2020年度から中小企業を引き継いだ新しい経営者が、条件付きで個人として企業の債務の返済義務を負わないようにする制度を導入するという。 

「個人保証」は中小企業が銀行など金融機関から融資を受ける時に経営者(社長)自身が保証する商習慣で、日本ではこれが一般的に行われている。

融資の返済が会社の資金で返済できなければ、経営者の個人の財産から責任をもって返済をしなければならないため、会社経営が傾けば、経営者個人の財産もすべて失いかねないというリスクが大きく、 身内(子など)を後継者とすることも、社内から後継者を抜擢することも、後継者のなりらがらずに、事業承継が難航するケースも多い。

「個人保証」は、会社と個人から債権の回収を図る“二重取り”との批判がかねてからあり、経営者の高齢化が進む中で事業承継を大きな障害となっていた。

全国銀行協会と日本商工会議所も、中小企業が事業を承継する際に、融資している金融機関が先代と後継者の双方の経営者から個人保証をとることを原則禁止する指針を年内に策定するという。


中小企業基盤整備機構の調査によると、承継を延期・断念する経営者の56%が「後継者に経営者保証を負わせたくない」との理由を挙げた。
「後継者が見つからない」は26%、「自身の経営者保証が解除されない」が11%とだといい、経営者保証が事業承継の検討に大きな影響を与えている現状が調査結果からもうかがえる。

帝国データバンクの調査によると経営者の平均年齢は2018年に59.7歳と、1990年に比べて5.7歳高齢化しているという。
「中小企業の事業承継問題」は、日本経済における最大の緊急課題の一つともいえる。

政府は、財務状況が健全で倒産リスクが低いと中小企業に対象を限定するため、下記の4つを条件として個人保証を免除し、その代わりに信用保証協会が債務を保証する仕組みを導入予定。
 ①会社が債務超過ではないこと
 ②借入金の返済条件を緩和していないこと
 ③利益に比べて借入金の金額が過大でないこと
 ④会社が経営者に過度な貸し付けをしていないこと


果たして、この政府の施策が、日本経済の根幹を支える中小企業の高齢化・後継者難の問題解決に向け一定の効果をあげ、経営者の世代交代・円満円滑な事業承継を1つでも多く実現できるか、 期待したいところである。

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