TFSコンサルティンググループ/TFS国際税理士法人 理事長 山崎 泰

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事業者なら知っておくべき源泉徴収の流れと計算方法

21.01.19 | 税務・会計

企業は、従業員への給与や社外の報酬などの支払いに対して、源泉徴収を行う義務があります。

従業員への給与やボーナスなどの支払いと、社外の取引先に対する報酬などの支払いとでは
計算方法が異なり、特に従業員に関しては、事前に提出してもらう申告書の準備なども
必要になります。

そのため、経理担当者はしっかりとそれぞれの手続きについて理解しておく必要があります。

そこで今回は、会社が知っておくべき源泉徴収の大まかな流れと、計算方法を説明します。

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◆ 源泉徴収は、従業員と社外の個人に対して行う

源泉徴収とは、特定の所得について、
その所得の支払者が支払いの時に所得税額を
あらかじめ徴収し、国に納付すること
をいいます。

源泉徴収義務は
個人への支払いに発生するもので、法人への支払いには発生しません

社外の取引先であれば、弁護士や司法書士など特定の資格を持つ人に支払う報酬や、
個人に依頼した原稿料や講演料などを支払う際に、その都度、源泉徴収が必要になります。

一方、社内の従業員に関しては、給与や賞与、退職金などに対して、
源泉徴収を行うことになります。
ただし、一定の金額以下の通勤手当や出張費、技術習得のために支給する費用などは
源泉徴収を行う必要がありません。

これらの報酬や給与から源泉徴収した所得税は、原則として、
支払いが発生した月の翌月10日までに、所轄の税務署に納付しなければいけません

それではここで、事業者が知っておくべき社内における源泉徴収の全体の流れを確認しましょう。

まず、従業員の源泉徴収について説明します。
 ①1年の最初の給与を支払う前日までに、従業員に『扶養控除等(異動)申告書』を提出
  してもらいます。
 ②この申告書をもとに所得税の扶養控除を適用します。
  ※なお、所得税の対象となる『課税所得』は、給与総額から、通勤手当やさまざまな控除
  (社会保険料など)を引いた残りの金額
となります。

この課税所得に応じて定められている所得税を、事業者が毎月給与から源泉徴収し、
翌月10日までに納付します。
しかし、源泉徴収は簡易的な計算方法で算出した仮の税額なので、
1年の間に扶養が増えたり、給与の増減があったりした場合、その額は変動します。

そのため、源泉徴収の額と、本来の課税額とズレが生じる可能性が高く、
その過不足分の調整のために『年末調整』を行います。

年末調整とは、その名の通り、
毎年末に行われる所得税の過不足分を調整する作業のことで、
年末調整の結果、徴収額が不足していれば、
年末調整の月の給与から不足分を差し引くことになりますし、
逆に徴収額が多ければ、還付を受けることになります。

ちなみに年末調整には、『扶養控除等(異動)申告書』のほか、
『基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書』
『保険料控除申告書』など各種控除のための申告書が必要になります。
該当する従業員に提出してもらうのを忘れないようにしましょう。

そして、社外の取引先の源泉徴収についても説明します。
社外の取引先の報酬に関しては、報酬を支払うたびに定められた所得税を源泉徴収し、
翌月10日までに納付します。
また、毎年1月にはその前年1年間に支払った報酬額と源泉徴収税額を記載した『支払調書』
取引先別に作成し、税務署に提出します。
社外の取引先に関しては、通常、支払いを受けた本人が直接確定申告を行い、
納税額の過不足を調整するため、年末調整の必要はありません。


◆ 社内と社外で異なる計算方法

源泉徴収は社内と社外の支払いにより、計算方法も異なります。
社外への支払いは、相手が個人事業主になるので、基本的には
支払い金額×10.21%(所得税10%+東日本大震災の復興のための復興特別所得税0.21%)
の計算をもとに税額を算出し、税務署に納めます。

一方、従業員への支払いについての源泉徴収の計算は、
先ほどの『課税所得』を求めた後、国税庁の定めた『源泉徴収税額表』を参照し、
算出した税額を税務署に納めます。
ボーナスなどの賞与に関しては、『賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表』を参照して、
徴収額を確認しましょう。
いずれも国税庁のホームページで確認できますが、一般的には、
自社内の会計ソフトなどで自動的に計算する会社がほとんどです。

計算と同時にデータとして保存もできるため、会計ソフトを使うことは有用です。
とはいえ、事業者としては、源泉徴収の仕組みや全体の流れなどは
知っておいたほうがよいでしょう。

源泉徴収は従業員を雇用したり、個人事業主などに仕事を依頼したりするうえで
避けて通れないものです。

税金を正しく納め、会社の会計をスムーズに行っていくという観点からも、
間違いのないように理解しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2020年12月現在の法令・情報等に基づいています。

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