KUMA Partners株式会社

KUMA Partners株式会社
  • HOME
  • ビジネス
  • 「中小企業が日本を支えている」は本当か?

「中小企業が日本を支えている」は本当か?

21.05.04 | ビジネス

先日、2021年版の「中小企業白書」が発表されました。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html

 この「中小企業白書」、まずは普通に読み物としても結構面白いです。

今年で言うと、新型コロナウイルスが中小企業に与えた影響やその取り組み内容、そしてトレンドであるデジタル化や事業承継・M&Aに関する取り組みまで、事例をもとに書かれてます。

加えて面白いのが、載っている統計データでして、今回はそれをテーマにしております。
タイトルにもある「中小企業が日本を支えている」は本当か?
やや過激な見出しとなっておりますが、今回はこれについて深堀りしていきたいと思います。

ぜひ最後までお読みください。

中小企業は生産性が悪い?

中小企業白書によると、日本の企業の99%以上が中小企業です。
すごい数字です。
会社で働く人も、60~70%は中小企業で働いています。 

「中小企業が日本を支えている」という考え方はここから来ているのかなと推測されますが、本当にそうでしょうか?
特に、日本の【経済】を支えているかどうかは、別の尺度で測る必要があります。

例えば、従業員の目線で考えるとわかりやすいと思うのですが、
中小企業は大企業に比べて給与は低く、福利厚生も手厚くない傾向にあります。
また昇進の機会も多くはありません。 

何故か。
それは、一言で言ってしまうと【生産性が悪い】からです。

決して経営者の能力が低いということではありません。

例えば「規模の経済」という言葉があるように、仕組みとして大規模経営を行っている方が経営効率が良いのです。
日本の小さい畑とアメリカの大規模農場を想像していただけると分かりやすいと思います。 

生産性が悪いということは、利益が出にくいということですから、
会社が出した利益の従業員の取り分である「給料」は自ずと小さくなります。
ましてや新規採用なんてできませんから、既存の役職は固定され、昇進も難しくなります。

何より、利益を出し続けないと、会社の存続そのものが危ぶまれてしまいます。

ここで冒頭の中小企業白書のデータに戻ります。

日本の中小企業の割合は99%超で、従業員は60~70%を占めましたが、
その一方で、生み出した付加価値は日本全体の約50%なのです。

 これがどういうことを表すか。
逆から見るとこうなります。

「1%に満たない大企業に勤めている30%の人が、日本の付加価値の半分を生んでいる」

生産性の観点から言えば、大企業は中小企業の軽く100倍を超えることになります。
そう考えると、日本の会社が大企業ばかりになって、みんなが大企業に就職すれば日本はもっと生産性の高い国になるんじゃないかと思われるかもしれません。

 特に、海外から見た日本はそう見えているようです。
こんな本も出ています。

 ですが、今回はここで話は終わりません。

中小企業の良さとは?

では、中小企業は存在価値がないのかというとそうではありません。

上記はあくまで【経済性】、つまり「お金」の面だけで会社を捉えた場合の話です。
私は、中小企業の存在意義は別のところにあると考えています。

そのキーワードとなるのが、「社会性」や「地域性」です。

多くの中小企業が「地域密着」や「地元を盛り上げる」といったスローガンを掲げています。
そして、これは上辺だけの話ではなく、心の底からそう想っておられる経営者の方ばかりです。
 中小企業の社長は、その町で生まれ育った方が多いですから。

ズブズブに地域に根差した経営を行うことは、中小企業にしかできません。
大企業では、それこそ『生産性』が優先されるためです。 

私の地元は田舎にありますが、
地元企業が小中学校の子どもたちに仕事を教える職場体験の場となっていたり、
店舗がある企業であれば、地域の人のふれあいの場として、様々なイベントが開催されたりしています。
また、一大イベントであるお祭りはだいたい地元の企業が大きく貢献しています。

 こういう風に、本業ではない部分かもしれませんが、地元企業が地域で活躍することで、人の流れが生まれ、地域が活性化していきます。

ここに中小企業の大きな存在意義はあるのだろうと思います。
もちろん回りまわって、最終的には会社の利益につながることが一番大事ですが。

 あと忘れてはならないのが、中小企業は大企業への通過点であるという点です。
中小企業はみんな、大企業になる可能性があります。
どの大企業も最初は中小企業だったのですから。 

まとめ

高齢化がますます加速する現代では、このような中小企業の役割はますます大きくなっていくことが予想されます。
また、コロナ禍でリモートワークが増え、県外への外出も減り、人と接する機会がなくなってきた今こそ、地元企業を中心とした近場でのカジュアルなふれあいが大事になってくるのではないでしょうか。

 ということで、見だしとは裏腹に、中小企業にはものすごい存在意義があるのだという結論に至りました。

会社である以上、経済性、つまり利益を追いかけることは重要ですが、会社も社会的な存在です。
人とのつながりなどの目に見えない価値を築いていくも大切なことです。
今後の日本を支えていくのは、中小企業にしかできない「地域性」や「社会性」なのかもしれません。
中小企業は日本を支えています。

 中小企業白書も一度読んでみてください。 

最後までお読みいただきありがとうございました。

TOPへ