相続税の理由付記の不備で課税処分が取消された事案
14.12.23 | ニュース・情報
相続税の更正処分が行われる場合、その理由が通知されます。
これを理由付記といいますが、この理由付記の程度が十分ではないとして、課税処分そのものが取り消しとなった事案がありましたのでご紹介します。
問題の事案は、相続税のケースです。
被相続人は合資会社の役員で、同社は14億円の債務を抱えていました。そのため、相続人は、同社の無限責任社員である被相続人の債務弁済責任に基づく債務であるとして、この債務を相続税の相続財産の価額から控除して申告しました。
これに対して、国税はこの債務は相続財産から控除できないとして、これを認めない課税処分をしました。
その際、理由付記として、以下のように記載しました。
あなたは,本件申告において,合資会社A商会の相続開始日における債務超過額14億円を,同社の無限責任社員である被相続人の債務弁済責任に基づく債務で あるとして相続税の相続財産の価額から控除していますが,相続開始日において,被相続人が上記14億円に相当する債務を負っていたとは認められません。 従って,上記14億円に相当する債務については, 相続税法13条に規定する「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」には該当しませんので,債務控除は認められません。
この記載が、理由付記の内容として適切かが争われ、国税不服審判所は「理由付記が十分ではない」として課税処分を取り消しました。
なぜでしょう。
よく読むと、「債務を負っていたとは認められません」と記載されていますが、なぜ認められないのか、その理由が書かれていません。
つまり、債務を負っていたと認められないのは、
・そもそも債務がない
・被相続人が実際は無限責任社員ではない
・合資会社の債務はそもそも無限責任社員の債務ではない
など、幾つかの理由が考えられますが、今回の課税処分の理由がそのうちどれなのか、この理由付記からはわからないのです。
理由付記という手続は「行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分理由を名宛人に知らせて不服申立に便宜を与える」(行政手続法14条1項の趣旨)ために行われる手続です。
そして、今回の事案の理由付記では、この意味合いを満たすものではないと判断されたというわけです。
国税の課税処分は、このような理由でも争うことができる場合があり、しかもその結果、課税処分そのものが取り消されることがあります。
課税処分を争う場合、その処分そのものだけでは無く、手続に問題がなかったか、という点も十分に検討する必要があります。
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