社会保険労務士 吉田事務所

マイクロチップの装着義務化! 知っておきたいペットの法律

23.02.20 | ビジネス【法律豆知識】

犬や猫などに個体を識別するマイクロチップが埋め込まれていれば、迷子や災害、盗難などによってペットと離ればなれになったとしても、保護されたときに飼い主へ連絡することができます。
2022年6月1日から施行された改正動物愛護管理法では、ペットショップやブリーダーを通じて販売される犬や猫について、マイクロチップの装着と登録が義務づけられました。
一般人がペットショップやブリーダーから犬や猫を購入した場合には、マイクロチップの登録情報を自分の情報に変更する必要があります。
マイクロチップの装着と登録について、義務化の背景を踏まえながら説明します。

マイクロチップの形状と期待されている効果

マイクロチップとは、直径1.4mm、長さ8.2mm程度の円形状で、電池の交換などをする必要はなく、半永久的に使用することができる集積回路のことです。
チップには、国際的な規格であるISO規格に准じた15桁の番号が記録されており、環境省の指定する登録機関のデータベース『犬と猫のマイクロチップ情報登録』に登録された飼い主の情報と紐づけられています。

もし、飼っていた犬や猫と離ればなれになってしまっても、保護されたペットに埋め込まれたマイクロチップの情報と、データベースに登録された飼い主の情報を照合することで、そのペットの所有者が自分だと証明することができます。
また、迷子の犬や猫を保護した場合には、その情報をもとに飼い主に連絡することが可能です。

2011年の東日本大震災では、飼い主とペットが離ればなれになってしまうケースが続出し、保護された犬や猫の飼い主を探し出す作業が難航しました。
行政によって保護されたペットが飼い主の元に戻った割合は、犬が半数以下、猫にいたってはわずか数パーセントでした。

こうした状況を踏まえ、2019年には『動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)』が改正され、2022年6月1日からペットショップやブリーダーなどの犬猫等の販売業者や繁殖業者に対して、犬や猫へのマイクロチップの装着と登録が義務化されました。

また、マイクロチップには、ペットの飼育放棄や安易に捨ててしまうことを抑制する効果も期待されています。


登録変更の申請は紙もしくはオンラインで

ブリーダーは、犬や猫が産まれたら、獣医師に依頼してマイクロチップを埋め込んでもらい、データベースに犬や猫の性別や品種だけでなく、氏名や業者名などの情報を登録します。
一度装着されたマイクロチップは、生涯を通じて取り外されることはありません。

ペットショップはペットを販売するために、ブリーダーから犬や猫を購入したら、データベースに登録されている所有者の情報を自身の情報に変更する必要があります。
一般の飼い主がペットショップやブリーダーから犬や猫を購入する際も同様で、すでにデータベースに登録されているブリーダーやペットショップの情報を自分の情報に変更します。

登録および変更は、環境省の『犬と猫のマイクロチップ情報登録』のサイトで手続きができます。
登録はオンラインで行うことができ、登録手数料は300円です。
郵送を希望の場合は紙申請対応窓口あてに電話のうえ、申請用紙を取り寄せる必要があります。

オンラインの場合は、まず、ブリーダーやペットショップから渡されたマイクロチップの登録証明書を用意します。
パソコンやスマートフォンでデータベースの『犬と猫のマイクロチップ情報登録』にアクセスし、ガイドに従い、証明書に記載されたマイクロチップの識別番号および暗証番号、自身の氏名や連絡先などの所有者情報を入力していきます。
最後に手数料をカード決済などで支払い、登録証明書をダウンロードしたら変更登録が完了です。
この登録証明書は、大切に保管してください。

一方、ブリーダーとペットショップ以外から犬や猫の譲渡を受けた場合、マイクロチップの装着と登録は努力義務となっており、必ずしもマイクロチップの装着と登録を行う必要はありません。

先述したさまざまな理由から推進されているペットへのマイクロチップ装着ですが、ペットに異物を埋め込むことに拒否感を持つ飼い主は多く、また健康への悪影響を心配する声も上がっています。
しかし、環境省と日本獣医師会によれば、これまで装着による害はほとんどなく、海外でも健康被害は報告されていないとしています。
装着の費用は2,500~5,000円ほどで、マイクロチップは皮下に埋め込むため、注射の際の痛みとほぼ同等だといわれています。

マイクロチップは、ペットが行方不明になってしまった際、自分の元に返ってくる可能性を高め、外部環境に不慣れなペットを守ることにもつながります。
法改正前から飼っているペットに関しても、ペットを守る備えの一つとして検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2023年2月現在の法令・情報等に基づいています。

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