日高税務会計事務所

戦略の誤りは戦術ではカバー出来ない!?

23.03.18 | 所長メルマガ

ビジネスに関する用語には、軍事からの転用が数多い。「ターゲット」とか「インパクト」や「キャンペーン」などがそうだ。経営戦略とか戦術なども普通に使われている。顧客やライバルを獲物や敵に準えて考えるからだろう。顧客の「囲い込み」や「刈り取り」なども軍事用語では無さそうだが、上から目線のようで申し訳ない。本来は対等であるべきだろう。

  ところで、経営戦略と経営戦術の違いは厳密な定義があるわけでは無い。経営者やコンサルタント等で様々である。ことの重要性によって分けることが多いようだ。私は現場サイドだけで決定できるものは戦術と考え、リーダーの意思決定が必要なものが戦略と考えたい。もっとも、リーダーが戦術を担当することも十分あり得る。小さな組織では特にそうだ。リーダーは戦略も戦術も行う。
 一般に仕事では権限と責任が問題視されるが、部下には権限は委譲しても、責任の回避は出来ないのは当然のこと。仕事の丸投げは無能のリーダーとされる。これと同様、経営戦略に基づいた戦術は部下任せでも良い。やり方が分からないと相談されれば指導するだけのこと。いちいち指示していると、部下が自分で考え行動する力が身に付かない。しかし、経営戦略に関わる変更などは認めず、きちんと守らせなければならない。部下がその責任を取ることが出来ないからだ。また、上司も自分の責任の取れない戦略に関してはその上長に指示を仰ぐこと。会社の戦略の決定と最高責任は経営者にあるからだ。 ずいぶん前のことで、企業でQCサークルなど小集団活動が盛んなころの話しです。ある地方の大会で事例発表会が有り、参加しました。その中に鹿児島かどこかの中堅食品メーカーのあるサークルの発表がありました。なかなか立派な活動だと思いました。その会社は事例発表会の常連と聞きました。 ところが、数年後不況の影響で会社は倒産したとのこと。現場が多少優秀であっても経営の舵取りに失敗すれば会社は危うくなるものだと感じた記憶があります。「戦略の誤りは戦術ではカバーできない」と言いますが、まさにそのようです。よく考えてみれば、昔から学生の就職ランキングに上位に上がる大手企業は時代とともに変わっていきますが、その当時採用された優秀と思われる人材が、さらに事業を発展させたと言う事例はあまり感じ取れません。
 日本企業の改善・改良は世界に誇れるものと思います。しかしながら、これは現場戦術のレベルと考えることもできます。良いものを安く提供することは決して間違っていません。しかし、消費者が要求する以上の高付加価値、高価格商品などは戦略的に間違いかも知れません。先の見えない時代だからこそ、しっかりと世の中を見回し、自社の強みを活かす商品サービスを提供することが大切です。
 ビジネスやスポーツで欧米は規格やルールの変更に力が入ります。これに対して日本は決まったものの枠内で戦おうとします。戦略という観点からは弱いようです。 だから、戦術を極めて磨き上げたら規格やルールが変わり最終勝者に成れません。もっと戦略を意識する必要があります。特に経営者はそうするべきです。戦略の決定権は経営者にあるのです。これを放棄してはなりません。
 余談ですが、日本の良いところとして もめたら取りあえず現状維持 の特性があります。これは決して悪いことではありません。たとえば神社仏閣など被災したら、なるべく創建当時を維持し再現する場合が多いようです。伊勢神宮などもそうだと思います。最先端にバージョンアップしません。だから、伝統的な祭りや文化が、よその国より長く残る理由だと思います。しかし、デジタル化がなかなか進まない原因でもあります。 良いところは残して変わっていく必要があると思います。

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