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知らぬ間に違法な『偽装請負』になっていませんか?

23.05.09 | ビジネス【労働法】

副業の解禁やリモートワーク、時短勤務などの浸透によって働き方の多様化が進み、正社員やパートタイマーなどのほか、『業務委託』の形で働く人も増えてきました。
それにともなって『偽装請負』の問題が、しばしば指摘されています。
意図的で悪質なケースだけではなく、法律やルールへの理解が不十分なことから意図せず偽装請負になっていることもあります。
ここで基本的なルールや契約方法について確認しておきましょう。

業務委託とは? 委任・準委任との違いは?

最初に、一般に業務委託といわれる契約の基本について確認しておきましょう。
業務委託はよく耳にする言葉ですが、実は法律上は存在しない実務用語です。
業務委託は、民法で定められている『請負』『委任・準委任』に該当します。

民法では請負について「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と規定しています。
仕事の完成を約束し、完成した仕事に対して報酬を支払うものを『請負契約』といい、仕事の完成に対して請負人は責任を負うことになります。発注者と請負人は対等な立場にあり、業務の遂行について、請負人は発注者に雇用される労働者のように指揮命令下に置かれることはありません。
具体例としては、Web制作や広告制作、荷物の運搬、住宅の建設といった成果物が明確なものを、アウトソーシングで発注し、期日までに納品してもらうような契約です。

一方、委任・準委任について民法では「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」と規定しています。
業務遂行自体に対して契約を結ぶもので、業務に要した時間や日数、回数などを基に報酬が支払われます。
委任と準委任の違いは、法律行為か否かにあります。
税理士や弁護士に相続や各種手続きについて依頼する場合には法律行為に該当するので委任契約となり、経営コンサルタントにコンサルティングを依頼したり、従業員向けの研修を実施してもらうなどの依頼は法律行為ではないため準委任契約となります。


偽装請負にあたるか否かの判断基準とは

現在、業界・業種を問わず人手不足が深刻化しており、業務の外注化が増えてきています。
注意したいのは業務請負契約を結んだ業務についてです。
前述の通り、業務請負契約とは請負人が成果物をつくる過程について裁量権を持つ代わりに、成果を保証します。
そのため請負人は自己の裁量において、業務の内容によってはほかの労働者を雇い入れるなどして、複数人数で業務を遂行することもあります。
偽装請負が発生しやすいのは、このようなケースです。

このケースにおいて請負人に雇入れられた労働者は、請負人との労働契約によって業務を遂行します。
業務上の指揮命令関係は請負人と労働者の間にのみ存在するため、発注者はその労働者に対して直接指示や命令を出すことはできません。
しかしその際、発注者が労働者へ直接指示をしたといった実態があると、労働者派遣事業に該当することになり、労働者は派遣労働者と扱われ、偽装請負をしていると判断されます。
その場合、発注者、請負人ともに無許可の派遣業を行ったとして、労働者派遣法や職業安定法違反を問われるほか、労働者を保護する目的で禁止されている中間搾取を行ったとして労働基準法違反にも問われます。

平成24年に改正された厚生労働省による『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示』では、請負人は自分が雇った労働者に対して、以下の指示などをみずからの責任で行うこととされており、これらを請負人みずからが行わない場合は偽装請負と見なされます。
ここに一部を例示します。

●業務の遂行に関する指示そのほかの管理を(請負人)みずから行う
●労働時間や休日・休暇などに関する指示そのほかの管理を(請負人)みずから行う
●秩序を維持し、確保するための指示やそのほかの管理を(請負人)みずから行う   など

偽装請負と見なされる状況は、具体的には業種によって異なるため、厚生労働省は上記告示のほか、『労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド』を発行し業種別にその基準を例示しています。

働き方の多様化が進むなか、どのような契約が企業、働く人双方にとってメリットがあり、業務を進めやすいのかはケースバイケースです。
契約の基本を理解し、意図せず法律に抵触していたといったことのないよう体制を整えていきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年5月現在の法令・情報等に基づいています。

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