外村公認会計士税理士事務所

2024年4月から引き上げられる『障害者法定雇用率』とは

23.12.12 | ビジネス【労働法】

障害を持った人が一般の労働者と同じような雇用の機会を得ることができるよう、『障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)』に基づく『障害者雇用率制度』により、一定の規模の企業には障害者の雇用が義務づけられています。
対象となる企業は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を一定の割合以上にする必要があります。
この割合のことを『法定雇用率』といいます。法改正により、この法定雇用率が2024年4月から、段階的に引き上げられることになりました。
施行前に、必要となる対応を確認しておきましょう。

障害者を1人以上雇用する企業の範囲が拡大

障害の有無に関係なく、すべての人が希望や能力に応じて働くことができる社会を実現するという理念のもと、障害者雇用促進法によって、従業員が一定数以上の規模の企業に一定の割合以上で障害者を雇用する義務が課せられています。

障害者を雇用する割合となる法定雇用率は、これまで度々引き上げられてきました。
1998年に1.8%、2013年に2%、2018年に2.2%、そして2021年には2.3%に引き上げられています。
現行の2.3%という法定雇用率は、従業員を43.5人以上雇用している企業は障害者を1人以上雇用することになる割合です。

そして、障害者の雇用をさらに確保するために、障害者雇用促進法に関する政省令の改正が行われ、法定雇用率の段階的な引き上げが決定しました。
2024年4月より現行の2.3%から2.5%に、2026年7月からは2.7%の法定雇用率に引き上げられます。

この引き上げにより、障害者を1人以上雇用する必要のある企業の範囲が、2024年4月から従業員40人以上、2026年7月から従業員37.5人以上に広がることになります。
現状で障害者を雇用する義務のなかった従業員40人の企業は、2024年4月より新たに障害者を1人以上雇用する義務が生じることになります。
随時、自社が引き上げに伴う対象の範囲になるのかどうかを確認しましょう。

従業員数のカウントは、1年を超えて雇用されている、もしくは1年を超えて雇用される見込みがある「常用労働者」を対象に、週の所定労働時間が30時間以上の従業員を1人として数え、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者に関しては0.5人としてカウントします。
正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、あくまで所定労働時間で判断します。
たとえば、所定労働時間が週30時間以上の従業員が10人、短時間労働者が35人の企業は、従業員数が40人を超えていますが対象の範囲外になります。

特定業種の設定除外率と障害者の算定方法

法定雇用率は障害者の雇用を確保するためのものですが、障害者の就業が困難とされる業種については、従業員数をカウントする際の除外率が設定されています。

この除外率は、ゆくゆくは廃止されることになっており、特例措置として当分の間は該当する業種ごとに段階的に引き下げられた除外率で対応されています。
除外率の段階的な縮小も決定しており、今回の改正により、2025年4月以降は一律で10ポイント引き下げられることになりました。
「船員等による船舶運航等の事業」の70%を上限に、「幼稚園/幼保連携型認定こども園」の50%、「道路旅客運送業/小学校」の45%と続き、下限は「非鉄金属第一次製錬/精製業/貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く)」の5%となっています。

除外率は、主に障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種に設定されており、これらの除外率が定められている業種では、障害者の雇用義務数を次の計算式で求めます。
{従業員数-(従業員数×除外率)}×法定雇用率

たとえば、改正後の金属鉱業の除外率は30%なので、実際の従業員数が40人だったとしても、新たに障害者を1人以上雇用する義務は生じません。

また、雇用の対象となる障害者についても算定方法が変更されました。
2023年4月以降、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者について、雇用率上、雇入れからの期間等に関係なく、1人としてカウントできるようになりました。
さらに2024年4月以降は、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者・重度身体障害者および重度知的障害者について、それぞれ1人を0.5人としてカウントできます。

障害者を雇用する義務のある企業は、毎年6月1日時点での障害者雇用状況のハローワークへの報告が義務づけられ、障害者の雇用の促進と継続を図るための『障害者雇用推進者』の選任が努力義務となります。
障害者の雇用の機会を増やして、すべての人が暮らしやすい社会になるために、雇用義務の対象である企業は制度をしっかり把握して遵守していきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年12月現在の法令・情報等に基づいています。

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