宮田総合法務事務所

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冬に増える『ノロウイルス』の感染を防ぐためにしておくべきこと

24.02.06 | 業種別【飲食業】

食中毒は夏場に多発するイメージがありますが、実はノロウイルスが原因の食中毒は冬場に増加します。
ノロウイルスは感染力が非常に強く、感染者のふん便やおう吐ぶつ、感染者が触れたものなどから感染が広がっていきます。
もし、食品を取り扱う飲食店の従業員がノロウイルスに感染していた場合、爆発的な集団感染を引き起こしかねず、最悪の場合は営業停止などに陥る危険性もあります。
そこで今回は、ノロウイルスの感染を防ぐために、飲食店ができる対策について紹介します。

店内のトイレの清掃を徹底しよう

1年を通して起きる食中毒のおよそ半数はノロウイルスによるものといわれ、厚生労働省の『食中毒統計(2018年~2022年の平均)』でも、原因別の食中毒患者数の1位はノロウイルスとなっています。
また、同資料によるとノロウイルスが原因の食中毒の53%は11月~翌年2月にかけて発生しており、飲食店では特に冬場のノロウイルス対策に力を入れる必要があることがわかります。

ノロウイルスは手指や食品などを介した経口感染がほとんどで、感染するとウイルスが腸管で増殖し、24~48時間の潜伏期間を経て、おう吐、下痢、腹痛、微熱などの症状を引き起こします。
飲食店では主に、ウイルスに感染しているお客や従業員が利用したトイレを介して感染が広がるケースと、感染している従業員が調理した食品を介して感染が広がるケースが考えられます。
それぞれのケースでノロウイルスを防ぐには、「消毒」と「処理」と「健康管理」がとても重要です。

ノロウイルスは人によって感染しても症状が出ないことがあるため、その場合、感染者は自分が感染していることを知らずに通常通りの生活を送ってしまいます。
ノロウイルスの感染を防ぐには、感染の有無とは関係なく、日頃からお客や従業員が使用するトイレや洗面所の清掃を徹底的に行う必要があります。

清掃の際は、使い捨てのマスクや手袋、エプロンを着用し、ノロウイルスに有効な塩素消毒液を使用しましょう。
塩素消毒液は次亜塩素酸ナトリウムを水で薄めて作ることもできるほか、次亜塩素酸ナトリウムを含む家庭用の塩素系漂白剤でも代用することができます。
これらの塩素消毒液はトイレ以外に、衣類、ドアノブ、食器、調理器具、店内の家具などの消毒にも有効です。
ただし、次亜塩素酸ナトリウムは金属腐食性があるため、金属部の消毒後は特によく拭き取るようにしてください。

また、アルコール類を提供する飲食店では、お客のおう吐物を処理することもあります。
その際は、お客がノロウイルスに感染している可能性もあるため、すみやかに処理をしなければいけません。
処理をする際は前述同様、使い捨てのマスクや手袋、エプロンを身に着けて、市販の凝固剤で固め、ペーパータオルなどで拭き取り、塩素消毒後に水拭きをします。
ノロウイルスは乾燥すると空中に漂い、人の口に入る可能性があるので、十分に注意しながら迅速に処理することが大切です。
拭き取ったおう吐物や使った手袋などはビニール袋に入れて密閉し、塩素消毒液に浸して破棄します。
すべての処理が終わったら、石けんと流水でよく手を洗いましょう。

従業員の健康状態を把握して感染を防ぐ

飲食店でのノロウイルスの感染経路のなかでも、特に注意したいのが、食品を調理する従業員が感染を広げてしまうケースです。
ノロウイルスに感染している従業員が調理した食品や触れた食器などを介して、お客が感染してしまうことがあります。

従業員に下痢やおう吐、風邪のような症状がある場合は、食品を直接取り扱う作業には従事させず、場合によっては出勤を控えてもらうといった判断も必要になります。
石けんと流水による手洗いの徹底や、食器や調理器具の消毒、食材の適切な調理などはもちろんですが、経営者は従業員の健康管理にも気を配ることが大切です。
従業員には出勤時などに自身の体調について報告してもらい、常に健康状態を把握しておくようにしましょう。

従業員に感染の疑いがある場合は、すみやかに医療機関で受診するように促し、感染の有無を確認することも重要です。
ノロウイルスに効果がある抗ウイルス剤や特効薬は存在せず、対症療法が一般的で、症状が改善するまでは安静にするしかありません。
ノロウイルスの感染者は、1週間~1カ月程度はウイルスの排泄が続くこともあるため、症状が改善した後も、しばらくは食品を直接取り扱う作業に従事させないようにしてください。

感染した従業員が調理した食品を介して感染が広がるケースや、トイレを介して感染が広がるケースのほかにも、感染者の会話や咳、くしゃみなどによる飛沫感染や、汚染された井戸水、汚染された二枚貝などが要因となることもあります。
飲食店は厚生労働省のサイトやリーフレットなどを参考にしながら、ノロウイルスの感染者を出さないように、対策を講じることが何よりも重要です。
もし、自店のお客のなかからノロウイルスの感染者が複数出てしまった場合は、保健所に連絡して指示を仰ぎましょう。


※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。

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