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事業承継の「2つのゴール」と「ステップ」とは

15.06.09 | コラム

経営者が高齢となり、事業承継を考えるケースが増えています。

 しかし、具体的にどこに向かって、どのようなステップで進めていけばいいのでしょうか。
 今回は、事業承継の2つのゴールとそのステップについて、大まかな点をお話していきます。

事業承継は100の会社があれば100とおりの方法があるものです。
 なぜなら、社長さんの性格や家族構成、どのような事業をしているか、そのような役員・社員がいるかなどによって、会社の性格は異なり、どうしてもそれぞれ個別に対策を練って、計画していく必要があるからです。

 しかし、もし事業承継を考えるなら、どのような方向に向かって、どのように進めていくべきか、その大きな流れを掴むことは意味があるでしょう。


事業承継の2つのゴール

 事業承継には、2つのゴールがあります。
 社長の親族の方に継ぐ方法と、親族以外の方に継ぐ方法です。

 親族の方に継ぐ方法は、言うまでもなく、社長の息子さんなどが2代目として会社を承継していく方法です。
 この場合のメリットは、何といっても会社の組織が安定することです。
 まず従業員の方は、社長の親族の方、特に息子さんなどが2代目であれば、それだけで安心感があります。
 また、取引先や銀行などの金融機関も、大きな方針変更がないと思われるので、安心して取引を継続できます。

 特に金融機関については、2代目に会社が承継されても先代社長が元気であれば信用力がそのまま活きることから、会社の資金繰りなども安定しやすいことになります。

 このように、できれば親族に承継するのが一番良いのですが、後継者となる親族がいない場合は、親族以外の方に承継することを検討する必要があります。
 例えば長年勤めた役員の方に事業を引き継いでもらう場合や、全く他人に会社を売却するという選択肢を考えなければなりません。

 この方法は、社長が大株主であることが多い中小企業では、株式の売却により社長の引退後の生活資金を得ると同時に、事業を継続することで社員の今後の生活を維持することができるというメリットがあります。

 ただし、この場合も後継者となる社員がいるかどうか、という人材の問題が残るほか、社長が引退することにより、社員、取引先、金融機関が今後に不安を抱くことになり、事業の遂行や資金繰りが難しくなる場合があるという問題があります。

 しかしながら、中小企業庁の調査によると、親族以外の方への事業承継は、20年以上前はわずか数%しかありませんでしたが、ここ10年程では40%前後まで増加してきています。
 つまり、親族外承継は現在では一般的になってきているということができるでしょう。



事業承継のステップ

 以上のような2つのゴールを見据えて、具体的にどのようなステップで事業承継に取り組んでいくかを考えてみましょう。


ステップ1 後継者を決める

 まず最初の、そして最重要のステップは、当然のことではありますが「後継者の決定」です。
 これは、親族に継ぐ場合にも、親族以外の方に継ぐ場合でも同じで、まず後継者が決まらないことには、事業承継は進められません。

 そして、ここが最大の難関と言えます。中小企業庁の調査によると、経営者が事業承継をまだ判断していない理由の30%が、後継者の確保ができるかわからないことを挙げているからです。

 しかし、もし後継者となる人を決めることができたら、その後は事業承継に向けて粛々と進めていくことになります。
 とはいえ、事業承継には5年から10年の時間がかかることが普通です。つまり、それだけ早く始める必要があるということになります。


ステップ2 後継者を宣言する

 後継者が決まったら、次のステップとして、後継者の宣言を行います。
 つまり、社員や取引先に、何年か後にはこの人が後継者になるのだ、ということを周知します。
 これにより、周囲が抱く将来への不安を払しょくし、経営体制の安定化を図ることが目的です。
 また、宣言することにより、社長とその後継者の方にも覚悟を決めてもらうという効果があります。


ステップ3 株式の移転対策

 中小企業の場合、経営者が株式をしっかり保持していることは、経営の安定のために欠かせません。
 そのためには、社長が持っている株式を後継者の方にキチンと移転する必要があります。
 同時に、可能であれば分散している株式を買い取り、後継者の方の株式の議決権割合を高めておくという施策が重要になります。

 株式の議決権は、可能であれば100%、それが難しければ最低限66.7%以上が必要になります。
 100%であれば完全に経営は安定しますが、100%が無理であれば、株主総会の特別決議が可能な3分の2以上の議決権を最低限は持っておかなければならないからです。

 したがって、社長が持つ株式をどのように後継者の方に譲るかを考える必要があります。株価が高額すぎて譲渡できないような場合は、その引下げ対策なども合せて慎重に検討していく必要があります。
 また、社長の資産の多くが自分の会社の株式という場合、それを一人の後継者に譲ると、相続人に不公平感が生じて後々トラブルになる場合も良くあります。こういったことも視野に入れて、遺言を作っておいたり、遺留分の制限の承諾をあらかじめ取っておくなどの手を打って行きます。
 これには、だいたい5年ほどの時間がかかります。


ステップ4 リーダーシップの移転

 同時に、後継者の方がゆくゆくは自分で会社を経営していけるように「教習運転」する期間が必要になります。 この期間は、後継者の方の会社内での足場固めであると同時に、対外的に信用を築き上げる期間でもあります。

 ある2代目社長のお話によると、初代の社長はカリスマがあるから、大きな声で一括するだけで社員が動くが、2代目はカリスマ性がないので、そういう訳にはいかないそうです。
 このような場合は、社員に指示通り動いてもらうための必然性の説明や、報告がきちんと上がってくる仕組み作りが重要になります。
 つまり、カリスマの不足を、制度と仕組みでカバーするわけです。

 もちろん、このような仕組み作りにも時間を要しますから、この期間に順々にすすめていく必要があります。


ステップ5 先代の引退

 準備が整ったら、先代社長が正式に引退し、後継者の方が名実ともに会社のリーダーになります。

 この後も、先代社長は「手は放すが目は離さない」つかず離れずの期間が必要になる場合もあります。
 しかし、この段階に至れば、事業承継はほぼ完成したということが言えるでしょう。


 今回は、事業承継について取り得る2つのゴールと大まかな流れを、甚だ簡単ではありますが、ご紹介いたしました。
 事業承継を検討されている経営者様の参考になれば幸いです。


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