社会保険労務士 吉田事務所

「解雇予告手当」は、何日分、どのように計算して支払う?

16.03.10 | ビジネス【労働法】

「Aさんは、辞めてもらうしかないね。引き継ぎはどれぐらいでできるの?」

「引き継ぎは2週間ぐらいあれば大丈夫です」

「じゃあ、2週間後に辞めてもらおうか。早めに伝えてあげた方がいいから、事情を説明しておいて」 

2週間前に解雇を言い渡されても、社員さんとしては心構えがなかなかできるものではありません。

生活がありますし、次の仕事を見つける必要もあります。では、どれぐらい前に伝えればいいのでしょうか?

会社としては、社員さんに辞めてもらわないといけない事情が生じたときに辞めてもらいたいわけですが、そう簡単にはいきません。民法では2週間前に伝えることになっています(民法627条第1項)。 

しかし、労働基準法では、労働者を保護するためには2週間前の予告では不十分と考えています。解雇は30日前の予告が求められています(労働基準法20条第1項)。 

では、上記の2週間前の予告で辞めてもらう場合はどうすればいいでしょうか? 

2週間は働いてもらうので、労働の対価として通常通りに給料を払ってください。30日から14日を差し引いた16日分の解雇予告手当を払うことになります(労働基準法20条第2項)。たとえば、すぐに辞めてもらいたい場合は、30日分の解雇予告手当を支払うことになります。 

解雇予告手当として支払う1日分の計算は、平均賃金で行います。平均賃金とは、直前の3ヵ月間にその社員さんに対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額です。 

もしかしたら、社員さんから「有給休暇を使いたい」という申し出を受けるかもしれません。その場合は有給休暇を消費してもらって構いませんが、有給休暇の計算方法は次の3つです。 

1.平均賃金 
2.所定労働時間労働した場合の賃金 
3.標準報酬日額 

有給休暇の計算を、上記3つの方法のどれで行うかを、あらかじめ就業規則などで定めていれば、それに従ってください。いずれの場合でも、解雇予告手当の額と大きく変わりません。

社員さんからの自己都合退職の場合では、有給休暇をすべて消化してからの退職がよく行われたりします。しかし、会社都合解雇の場合では関係のないことなのです。 


経営者なら知っておきたい労働法


[記事提供] 

(運営:株式会社アックスコンサルティング)

社会保険労務士 吉田事務所
TOPへ