宮田総合法務事務所

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株主総会の適法な開催・運営大丈夫?

17.05.11 | ビジネス・事業経営にお役に立つ情報

3月決算の会社の株主総会が開催されるこれからの時期。

コンプライアンス(法令順守)が叫ばれている中で、株主総会の招集手続きや議案の決議について、法的に問題となりそうなリスク要因を挙げてみました・・・。

【株主総会の開催・運営・決議に関するリスク要因】


①真正な株主の把握ができているか?
   株式の贈与や売買をしたけれど、社内の株式譲渡承認手続き(※通常の中小企業は、株式を譲渡するには取締役会や株主総会の承認を得なければならない旨のいわゆる“譲渡制限”がついているので、この譲渡承認手続きが必要となる)を経ないと、譲渡の当事者間では有効ですが、会社に対する関係では効力を生じないとされています。
   つまり、譲受人は、会社に対して株式の持ち主が変わったことを主張できない(自分が新たな株主として会社の株主名簿への書換えを請求できない)だけではなく、会社側がうっかり株主名簿の書換えに応じたとしても、会社が定める承認機関の承認決議を経ていなければ、適法な株式譲渡として認められないことになります。
   そうなりますと、法律的にはまだ株主の地位にとどまっている株式の譲渡人に対して株主総会の招集通知を送る必要があります。本来の株主でない譲受人に招集通知を送ってしまっても実害はないかもしれませんが、真の株主に対して招集通知を発送していなければ、株主総会の開催自体が確定的に有効でなくなるリスクがあります。


②招集通知の発送はきちんとできているか?
  株主総会の招集通知は、総会開催日の一定期間前までに通知を発送しなければならない旨が会社法に定められています(取締役会を設置する会社と取締役会を置かない会社とは取り扱いが異なりますので、詳細はこちらをご参照下さい)。
  したがいまして、適法な招集手続きを踏まないで開催された株主総会の決議は、取り消されるリスクが生じます。
   なお、議決権を行使することができる全株主の同意があるときや株主全員が総会に出席する場合は招集手続自体を省略することができます(会社法第300条;ただし、定款で書面投票または電子投票を定めている会社は、議決権行使の機会を株主から奪ってしまう可能性があるとして招集手続きの省略は認められていない)。


③総会が有効に開催できているか?(定足数)
株主総会が適法に成立するためには、
議決権を行使することができる株主が一定の割合以上出席委任状等を含め)しなければなりません。この数を「定足数」と言いますが、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席することを原則とし、会社によっては、定款で定足数の要件を緩和しているところもあります。
この定足数を満たさないまま総会を開催し、決議を行ったとしても、上記②と同様、「決議取消の訴え」の対象になります。
なお、定足数に関しても、やはり真正な株主が誰かという問題が関わってきますので、
実際は株主として出資していないのに、名義だけ株主名簿に載っている“名義株主”の存在もリスク要因となります。


④決議要件を満たしているか?
決議する議案の内容により、「普通決議」「特別決議」「特殊決議」に分かれておりますので、必ずしも出席した株主の議決権の過半数の承認を得れば適法に決議したことになるとは限りませんので、注意が必要です。
また、株主総会に出席するのか、委任状による代理人の出席か、書面による議決権の行使かは問いませんが、そもそも、当該株主が議案の内容をきちんと理解してその成否を判断できなければなりませんので、認知症等で判断能力が喪失した場合は、株主として議決権を行使することはできないことになります。
特に、大株主たる創業社長が株式の全部または大半を持っている場合には、創業社長の判断能力喪失をもって、会社として有効な株主総会決議は一切できなくなるというリスクも認識すべきです(理論上、毎年の決算承認決議も定期的な役員改選決議もできなくなります)。
本題からはそれますが、そのリスク対策として、株式信託という手法があることも知っておいて頂きたいです。


⑤議場における緊急動議の取扱い
招集通知に記載のない議案は、原則として決議できません。
これは、出席をしなかった株主等に議決権を行使する機会を奪うことになるからです。
これは、全く新しい議案は勿論のことですが、招集通知に記載のあった議案について、議場において一部の修正がなされた場合(修正動議)にその決議が可能かどうかは非常に難しい問題です。
一般的な解釈としては、当初議題の範囲内で、かつ、招集通知及び株主総会参考書類の記載内容から株主が一般的に予見し得る範囲のもの(例えば、剰余金配当議案における配当金の増減や当初議案における役員候補者以外からの役員選任)については、許されるとされているようです。



コンプライアンス(法令順守)が叫ばれている中で、株主総会の招集手続きや議案の決議について、法的有効性が危ぶまれるようなやり方になっていないか、リスク対策の面から法律専門職のサポートを受けることをお勧めします!

宮田総合法務事務所においても株主総会招集・運営サポートサービスを行っておりますので、株式会社に限らず、公益法人・NPO法人・医療法人・社会福祉法人・マンション管理組合法人等においても、法的リスクを回避する予防法務についてお気軽に御相談下さいませ。


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