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『クマのプーさん』の著作権が切れて権利フリーとなりました

17.05.31 | ニュース六法

「くまのプーさん」(Winnie-the-Pooh)の児童小説が、今年の5月に著作権が切れて、いわゆるパブリックドメインとなりました。このため、著作権として保護されてきたコピー禁止などの制限がなくなり、二次創作も可能になりました。

ただし、著作権が切れたのは原作となった小説だけであって、小説で使用されていた挿絵や、ディズニーが制作した黄色い熊のぬいぐるみの著作権は生きていて、今後とも使用不可ですので、この点は注意が必要です。

(写真は、岩波少年文庫版の「くまのプーさん」(石井桃子訳))

■児童小説「くまのプーさん」

これは、アラン・アレクサンダー・ミルンが1926年に発表した児童小説で、いまなお世界中で読まれています。くまのぬいぐるみである「プー」と、森の仲間たちとの日常を描いた2つの物語集と2つの童謡の計4冊からなっています。それらの挿絵はイギリスの挿絵画家E.H.シェパード(1976年3月24日死去)という方が描かれています。

 

1960年代からは、ディズニーによって一連のアニメーション作品が作られ、一般に「くまのプーさん」というと、そちらのほうのぬいぐるみを連想することが多いかと思います。

 

ちなみに、米国民謡「森のくまさん」とは全く違いますので念のため(実は、「森のくまさん」の訳詞者の代理人をしてメディアで話題になった際に、よく人から、「あの熊のプーさんの事件はどうなったの?」とか混乱して聞かれることがありましたので。「森のプーさん」と言ったひともいました。)

 

 (下の写真は、同じくパブリックドメインとなった「星の王子さま」(講談社青い鳥文庫) サン・テグジュペリ(著)三田誠広(訳)) 



■著作権

児童小説「くまのプーさん」を書いたミルンが亡くなったのは1956年1月31日でした。日本の著作権保護期間は、創作者の死後50年ですが、戦時加算というものがあって、そこから約10年半の日数を加えて、ようやく著作権保護期間が切れます。それが、2017年5月21日にあたり、そこからパブリックドメイン(共有財産)となりました。そうなったことで、著作権の保護をうけなくなり、今後は二次創作を含めて、誰でもが自由に児童小説「くまのプーさん」を利用できるようになりました。


■戦時加算とは
日本の著作権法では、著作権の保護期間は「著作者の死後50年」となっています。しかし、敗戦後に締結したサンフランシスコ平和条約で、太平洋戦争中に日本が連合国民の著作権を保護しなかったとして、連合国民が戦争前または戦争中に取得した著作権について、通常の保護期間に戦争期間相当の期間を加算する義務が課せられました。連合国とは15ヵ国(アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、オランダ、ノルウェー、ベルギー、ギリシャ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、ブラジル、スリランカ、レバノン、パキスタン)で、そこの国民の著作権が戦時加算の対象となります。加算日数は、著作権取得の日、平和条約の批准時期によって異なっていますが、多くの国で約10年5ヵ月となっています。

      

■TPPとの関係

実は、この著作権切れに関しては、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の行く末が大きく関係していました。もし、TPPが発効していれば、著作権保護期間が死後50年から70年に延長されてしまい、「クマのプーさん」は、当面の間はパブリックドメインに入らないと言われていました。

 

しかし、アメリカのトランプ大統領が、TPPから離脱すると宣言して大統領令に署名したことから、TPPの発効は困難になり、そうするうちに、「くまのプーさん」の著作権が切れてしまったというわけです。

 

■自由に利用できるのは原作小説のみ

なお、著作権が切れて、自由に利用できるようになったのは、原作小説のみです。したがって、ディズニーが制作したアニメキャラクターは対象外です。これはまだまだ著作権で保護されています。

 

かつて、サン・テグジュペリの「星の王子さま」が、死後50年プラス戦時加算が過ぎて、パブリックドメインになった際に、本屋さんで多くの「星の王子さま」新訳本が並んでいたことがありました。同じようなことが、「クマのプーさん」でも起こるような感じがします。しかし、挿絵のほうについては、画家E.H.シェパードが死亡したのは、ミルンが亡くなった21年後ですから、まだまだ勝手に使用できません。このために、別の挿絵を使うことになろうかと思います。

                           

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