TMKを利用したインバウンド投資の節税スキーム
16.07.23 | 不動産証券化
海外投資家が日本に投資する場合の特定目的会社(TMK)を利用した節税スキームについて、2回の税制改正(平成22年度税制改正・平成27年度税制改正)により制限が加えられましたが、現在も一定の要件を満たすTMKでは税制改正前と同様の節税スキームを採用することが可能です。
この節税スキームを利用すれば、日本における課税は最大でも20.42%、最少では無税で、海外投資家へ配当することができます。
■TMKを利用した節税スキームの概要
TMKは導管性要件※の一つに、「優先出資及び特定出資の過半を国内で募集する」という、いわゆる国内募集要件が課せられています。
※TMKにおいて利益配当額を損金算入し、TMK段階で法人税等が課税されないようにするための要件
TMKへの優先出資及び特定出資は、匿名組合出資(TK)と異なり、海外投資家が投資する場合は租税条約の適用により配当に対する日本国内での課税が軽減されるため、海外投資家が日本の不動産等に投資する際に好んでTMKスキームが用いられておりますが、上記のとおり、海外投資家による優先出資及び特定出資は50%未満に抑える必要があることから、日本国内での課税軽減の効果を享受できるのは、総投資額のうち50%未満の部分に限られることとなります。
しかし、特定出資については、平成22年度税制改正前においては国内募集要件が課せられておらず、海外投資家からの投資を特定出資で行うことで、投資額の全てについて日本国内での課税軽減の効果を享受するスキームがしばしば行われていました。
ただし現在では、平成22年度税制改正及び平成27年度税制改正により、【原則としては】このような節税スキームを採用することができなくなっています。
(税制改正の内容については、↓の記事をご覧ください。)
https://mi-g.jp/mig/office/article/id/4020?office=SwpRRWkIp%2FU%3D
■TMKを利用した節税スキームの効果
上記の節税スキームを採用した場合と、通常のTMKスキームを採用した場合の税負担を比較してみます。
●試算の前提条件
・エクイティ投資額 100億円
・配当利回り 5%
・配当に対する源泉税率 20%
・日本国内の法人税等実効税率 30%
●節税スキームを採用した場合
・配当金額
→100億円×5%=5億円
・配当に対する源泉税(直接、海外投資家に配当)
→5億円×20%=1億円
●通常のTMKスキームを採用した場合
・配当金額
→100億円×5%=5億円
・配当に対する源泉税(49%部分を直接、海外投資家に配当)
→5億円×49%×20%=0.49億円
・国内配当分の法人税等(51%部分をいったん、国内法人に配当)
→5億円×51%×30%=0.765億円
・配当に対する源泉税(いったん国内法人に配当した51%部分について、法人税課税後に海外投資家に配当)
→(5億円×51%-0.765億円)×20%=0.357億円
以上より、上記の試算の前提条件下では、節税スキームを採用した場合の税額は1億円に対し、通常のTMKスキームを採用した場合の税額は1.612億円となり、節税スキームを採用すると、年間6,120万円の税負担減少効果が見込まれます。当然に、投資規模が大きくなれば、税負担の軽減効果はさらに大きくなります。
■TMKを利用した節税スキームをご検討される方へ
上記のとおり、この節税スキームは大きな効果がありますが、この節税スキームに利用できるTMKは次の2つの要件を満たしている必要があり、これから設立するTMKでは残念ながら採用することができません。
・平成22年4月1日以前に設立したTMKであること。
・平成27年3月31日までに業務開始届出を提出しているTMKであること。
この節税スキームの採用をご検討される方には、ご希望に応じて上記の要件を満たしたTMKをご案内させていただくことができますので、下記にメール又はお電話にてお問い合わせください。
■TMKを利用した節税スキームに関するお問い合わせ先
Mail:ss.all@silsphere.jp (24時間受付)
TEL:03-3230-6789(平日9:00~18:00受付)
□本メールマガジンは専門的な内容を分かりやすくするため、 敢えて詳細な要件などは省略していることもございます。
お伝えした方法を実行する際は当社までご相談ください。
当社にご相談の無い状況でこの情報を利用されて生じたいかなる損害に ついても、当社は賠償責任を負いません。
- 株式会社シルスフィア会計事務所/シルスフィア税理士事務所
- カテゴリ
- お申込み/アンケートフォーム