大阪プライム法律事務所

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NHK受信料訴訟が最高裁大法廷へ

16.11.21 | ニュース六法

NHKの受信料契約について、受信料契約をしたくないという人は結構います。強制的に契約締結をもとめられることへの疑問からでしょう。日本では「契約自由の原則」というのがあって、基本的には契約をするかどうかの選択権は各人にあるのが大原則だからです。しかし、放送法という法律によって、「受信設備を設置したらNHKと受信契約を結ばなければならない」と定めているので、契約を拒否した者に、NHKは受信料の支払いを求める訴訟を多く行っています。これまで、多くの裁判所で支払いを命じる判決が出されました。

今回、そのうちの一つの事件について、最高裁が大法廷に回付したことが報じられました。この事件は、平成25年12月18日に出された東京高等裁判所判決(下田文男裁判長)を不服とした上告審です。どうなるでしょうか。

■大法廷では、憲法判断や重要な法的問題についての判断を示す場合に行われます。

今回、最高裁大法廷で審理されることになった事件の報道等から見ると、双方の主張や高裁での判断内容は、概ね以下のような内容のようです。

 

(1)争点1 放送法の規定は合憲か

   被告側    違憲(契約の自由が制限されている)

   NHK    合憲(契約の自由は制限されない)

   東京高裁判決 合憲(契約の自由は制限されるが、公共の福祉に適合するため)

(2)争点2 受信契約を拒否する側といつの時点で契約が成立するか。

   被告側    契約を承諾しない限り成立しない

   NHK    NHKが契約の申し込みをした時点で成立する

   東京高裁判決 契約の成立を確認した判決が確定した時点で成立する

(3)争点3 受信料はいつから支払わねばならないか

   被告側    仮にNHKが勝っても、その時点からで、過去には遡らない

   NHK    テレビを設置した時点に遡って、そこからの支払い義務がある

   東京高裁判決 テレビを設置した時点に遡って、そこからの支払い義務がある

 

二審(東京高裁)の判決は、争点1では、放送法の規定は「公共の福祉に適合し、合憲だ」とした上で、争点2の「契約がいつ成立するか」について、NHKの起こした裁判で受信契約の「承諾」を命じた判決が確定したら成立する、と判断しました。しかし、契約の成立はその時点だが、争点3の「受診料の発生時期」については、「受信設備を設置した時期にさかのぼって支払わなければならない」としたのです。つまり、訴えられた男性に、遡ってテレビを設置した時期以降の受信料の支払いを命じました。

■今回の高裁判決の影響
この裁判では、NHKは放送法に基づき、契約を拒否していても、NHKから契約申し込みの通知が届いた時点で契約成立し、支払い義務が生じると主張していました。しかし、この東京高裁判決は、このNHKの主張は退けて、契約は「NHKの勝訴判決が確定すれば成立する」と判断したのです。これでは、NHKは契約を拒み続ける世帯に対しては、今後も裁判を起こして勝たねば請求ができないことになります。これは、NHKにとっても困った判決だったと思われます。もし、大法廷がこの高裁判断を維持すれば、現場での影響は大きいことになります。

 

実は、今回の東京高裁判決と同じ東京高裁ですが、直前に別の裁判官によって下された平成25年10月30日東京高裁判決があり、そこでは自動的契約成立説に立ちました。この判決は、第12民事部難波孝一裁判長によるもので、「NHKがテレビ受信機を設置した者に対し受信契約締結の申込みをしたときは、特段の事情のない限り、申込みから2週間を経過したときに受信契約が成立する」としたもので、NHK側の主張にほぼ沿った内容となっています。

 

もし、今回の大法廷で、これと同じく「契約成立の起点はNHKが通知した時」と認めた場合、NHKは個別に裁判を起こさなくても、支払い義務が生じているので催促はやりやすくなります。

 

■受信料を遡って徴収できる期間について

今回の二審の東京高裁では、争点3について、NHKの主張どおりに、「(契約が成立すれば)テレビ設置時点から支払い義務がある」と判断しました。つまりは、契約が成立するのは裁判で勝ってからではあるが、結局遡っての請求ができるというものです。もし、大法廷判決が同じ判断を示したならば、遡って受信料は請求されることになり、NHKにとってはありがたいことになります。

 

最高裁の15名の裁判官が、NHK受信料にどのような判断を下すか気になります。

 

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