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従業員に順位をつけない人事評価制度『ノーレイティング』とは?

20.02.25 |

従来の日本企業の多くが、人事評価制度に年次評価を取り入れてきました。 
しかし、突出した才能を持った従業員を正しく評価できない、リアルタイムなレスポンスができないなど、さまざまな問題点がありました。 
そんな年次評価に代わって、新たな人事評価制度がにわかに注目を集めています。
それが『ノーレイティング』です。 
そこで、今回はこれまでの人事評価制度の弱点を克服したノーレイティングについて、説明します。

人事評価制度の主流である年次評価の問題点

従来の年次評価は、1960年代くらいに確立され、その後、長い間、日本企業における人事評価制度の主流となってきました。
四半期に一度、社員を仕事量や質、遂行能力やスキルなどを基に、DからSまでのランクを付けるなどして人事考課の参考にするのが年次評価ですが、この制度にはさまざまな欠点がありました。

まず、年次評価のレイティング(評価)は、画一的な価値観のもと、社員一人ひとりの評価を相対的に行います。
そのため、突出した才能や、高いスキルを持った従業員を正しく評価できない、気づきにくいというデメリットがありました。
あくまでその企業の価値観の枠の中で評価を下すので、そこからはみ出している人間には、ランクを付けることができなくなってしまうというわけです。
当然、突出した才能や、高いスキルを持った従業員は正しい評価をしてくれない会社を見限り、離れていってしまいます。

また、レイティングの四半期に一度というタイミングも大きな弱点です。
評価が行われるのは、従業員の過去の仕事の結果についてであって、従業員の今を評価しているわけではありません。
従業員にとってみれば、リアルタイムなレスポンスを期待することができず、歯がゆい思いをしてしまうことでしょう。
そのため、モチベーションも上がりません。

このほかにも、レイティングでは中間層に評価が集中しやすく、従業員が評価の実感を得づらかったり、そもそもの評価自体に上司の主観が入って不透明になってしまったりなど、いろいろな問題点がありました。


ノーレイティングのメリットとデメリット

そして今、年次評価の問題点を払拭する『ノーレイティング』と呼ばれる人事評価制度が、アメリカのGEやマイクロソフト、ゴールドマン・サックスなど、先進的な企業を中心に導入されてきています。

『ノーレイティング』とは、レイティングを行わない人事評価制度のことで、従来の制度とは異なり、毎月数回、必要なときに上司と部下が1対1の面談を行い、リアルタイムで目標設定やフィードバックを行ったうえで上司が部下を評価します。
直接評価を伝えられるので部下も納得しやすいですし、なにより、リアルタイムでのフィードバックは仕事のやる気にもつながります。

一昔前ならいざしらず、目まぐるしく状況が変化する現代の世の中にあって、四半期に一度の評価では、従業員を正しく評価できないのではないでしょうか。
リアルタイムで、その都度評価していくノーレイティングというやり方は、現代の動きに合った評価方法といえるでしょう。

さらに、ノーレイティングでは、画一的な評価ではなく、きちんと個人に注目して評価を下すので、会社と従業員の認識のズレが少なくなるのもメリットです。
上司と部下が密なコミュニケーションを取ることで、お互いの齟齬がなくなり、よい関係性を築くことにもつながります。
まさに従業員に合わせた人事評価制度といえるでしょう。

給与決定に関しても、従来の制度では、レイティングにより決定したランクによって自動的に給与が決まっていましたが、ノーレイティングでは、明確な決まりがありません。
アメリカの企業のなかには、会社が人件費の予算を上長に提示し、上長がそれぞれの部下に予算の範囲内で給与を分配していくという方法を行っているところも存在します。
つまり、リアルタイムな評価によって、随時、給与額も決まっていくというわけです。
仕事で成果を出せば、すぐに給与額に反映されることになり、当然、従業員のモチベーションも上がります。

よいことづくめの制度のように思えますが、デメリットはあります。
一番の問題は、上司である管理職の人間の負担が増大することです。
部下と常にコミュニケーションを取らなければならず、しかもその都度、正しい目標設定やフィードバックを行わなくてはなりません。
そもそも導入するには、評価を下す者が高いマネジメント能力を有し、部下に信頼されていなければいけません。
つまり、まずは評価を行う者を適切に選ばなければならないというむずかしさがあるのです。
簡単にはいかないかもしれませんし、年次評価制度が長年根付いている企業など、業態によっては向いていない企業もあります。

ノーレイティングはこれまでの人事評価制度の問題点を払拭する制度です。
まずは自社がノーレイティングを導入することで、どのようなメリットが得られるのかをしっかりと考えるようにしましょう。
そのうえで、導入できるかどうか検討していく必要があります。


※本記事の記載内容は、2020年2月現在の法令・情報等に基づいています。

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