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円満な事業承継を見据えた定款作成の考え方とは?

20.02.25 |

いざ会社を設立しようと思ったとき、必ず作らなければならないものがあります。
それは定款です。
定款とは、会社の憲法にあたる重要なものです。 
定款を作成するときは、将来、事業承継を進めることを見据えたうえで、作成しなくてはなりません。
そこで今回は、円満な事業承継を見据えた定款作成の考え方について紹介します。

定款が重要である理由とは?

会社を設立しようとする人は、定款を作成したうえ、設立する会社の本店所在地を管轄する公証役場において定款の認証を受ける必要があります(会社法26条、30条)。

株式会社を運営していくルールについては、会社法という法律により、事細かな規定が用意されています。
会社法によるデフォルトルールで会社を経営することももちろん可能ですが、会社法には、定款で定めた場合に限って会社法のデフォルトルールから外れることを認める規定が多々存在しており、会社法が認めた範囲内で、自社のオリジナルルールでの経営をすることが可能なのです。
これを『定款自治』といい、定款が会社の憲法だといわれるゆえんです。 

さて、これから新規事業を起こす場合、『事業承継』というワードは、とても縁遠く感じられるのではないでしょうか。
しかし現在、多くの中小企業が事業承継に苦しんでいる現実があり、事業承継は無視できない要素です。
そして、あらかじめ事業承継を見据えた定款を作成することは、事業承継を円滑に進めるうえで重要な要素であるといわれています。


定款による株式の譲渡制限の問題点

大多数の中小企業では、その定款において、『当会社の株式を譲渡により取得するには、○○の承認を受けなければならない。』などとして、株主が株式の譲渡を行う際には、株主総会や取締役会の承認が必要であるとしています。
これは、同族で経営することの多い中小企業において、好ましくない第三者が株主として入り込むことを防ぎ、会社の運営を安定させる必要があるからです。

ここまでは、多くの方にとって馴染みのある話です。
では、株主が死亡して、その相続人が株式を相続した場合は、上記の譲渡制限を根拠に、会社は当該相続人による株式の取得を拒否することができるのでしょうか。

結論として、定款による株式の譲渡制限があったとしても、株式の相続までを制限することはできません
これは定款による譲渡制限は、あくまでも『譲渡』(贈与や売買など)を制限するのみであり、いわゆる『一般承継』(権利義務の一切を承継すること。相続が代表的です)による株式の移動までを制限するものではないからです。
したがって、既存の株主が死亡して相続が発生した際には、従来は経営に一切かかわってこなかった親族が自動的に株主となってしまうということが発生するのです。
これでは、安定的な会社運営が損なわれることや、株主数の増加により事務負担が増大するなどのリスクを回避することができません。


好ましくない者の経営参画を防ぐには?

株式会社は、譲渡制限株式について、相続そのほか一般承継により当該株式を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができます(会社法174条)。
定款に『当会社は、相続その他一般承継により当会社の譲渡制限株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。』などと記載しておくことにより、相続によって好ましくない者が経営に参画することを防ぐことができるというわけです。

上記規定は、相続発生後に定款を変更することによっても利用することができます。
しかし、定款の変更には、少なくとも株主総会の特別決議が必要であり、争いが生じてから定款を変更するというのは現実的ではないでしょう。

今回は、相続人などに対する売渡請求について紹介しましたが、そのほかにも、あらかじめ定款に記載しておくことで利用できる制度は多々存在します

会社の設立の際には、流通している定款のひな型をそのまま利用するのではなく、設立しようとする会社の規模、株主構成、将来の事業承継など、会社の将来を見据えたうえで作成するようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2020年2月現在の法令・情報等に基づいています。

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