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変わりゆく人材需要、会社を引っ張るT型人材とは?

21.02.09 |

かつて終身雇用制度が主だった時代は、いわゆる総合職に向いている人材と専門職に向いている人材、という程度にしか人の使い分けがありませんでした。
近年は、T型人材やΠ(パイ)型人材、さらにH型人材など、さまざまなタイプの人材分けが行われています。
そこで今回は、近年の企業が欲しがるT型人材を中心に、日本で求められてきた人材タイプの変遷なども説明していきます。

IT技術の発展と終身雇用制度の撤廃による影響

現在、日本では、『終身雇用制度』を前提とした『年功序列制度』を採用している会社が多く、減少傾向にあるものの、いまだ全体の半数近くの企業がこの制度を採用しているといいます。
しかし、社会の変化により、『成果主義』を導入している企業も増えてきています。
また、若年層には仕事の成果で自身を評価してほしいという要望があり、少子高齢化における若手の人材不足を解消するため、若年層向けに成果主義を掲げる企業も増えてきました。
そのようななか、企業が求める人材のタイプも変化してきています。

そもそも、終身雇用制度が当たり前だった時代の人事担当者は、人材をゼネラリストとスペシャリストの二つのタイプに分類して、採用や配置を決めていました。

ゼネラリストとは、広範囲の知識や技術を有する人材で、いわゆる会社の総合職に向いている人材です。
総合職として採用された人は経験を積むためにさまざまな部署への異動を経験するのが一般的で、将来的には幹部候補になる人材ともいわれてきました。
一方、スペシャリストは専門的な知識や経験を有し、また専門分野にまつわる資格や技能を持っている人材のことです。
企業においては、技術職や専門職に就かせることが多く、技術向上の要とされていました。

どちらも企業に求められる成果が異なるため、どちらが優れているかという議論は意味をなしません。
しかし、それでも新卒採用の現場などでは、会社の中心的な役割を担う総合職の人気が高かったのは事実であり、企業側も総合職に適したゼネラリストの採用を積極的に行ってきました。

しかし、近年はIT技術などテクノロジーの発展によって、企業におけるスペシャリストの需要が急激に高まっています。


時代の求めはスペシャリストからT型人材へ

実際、日本の技術革新を支えたのはWebエンジニアや研究開発者など、企業のスペシャリストたちだといわれています。
また、人材流動性が高くなったことにより、ゼネラリストよりもスペシャリストを求める声がより増えたのも事実です。

さらに、テクノロジーの一般化と企業のグローバル化などにより、2010年~2020年頃から、新たな人材需要が生まれました。

T型人材とは、『T』の縦棒を『専門性』、横棒を『視野の広さ』に見立てた、いわばゼネラリストとスペシャリストの両面を兼ね備えた人材のことをいいます。
つまり、従来、重要視されてきたような、1つのジャンルの専門家である『I型人材』に代わり、幅広く知見を持ち、創造性のある人材が求められるようになったのです。

さらに、人材の分類は多様化していき、二つの専門分野に関する技術や知識を持ちながら、幅広い知見も併せ持つ『Π型(パイ型)人材』や、2つの専門分野を担いつつ、他分野の橋渡し役にもなれる『H型人材』など、T型人材の発展型ともいえる人材タイプも同様に生み出されています。
また、幅広い知見は持ち合わせていないものの、3つの専門分野を持つ『△型(トライアングル型)人材』などの必要性も高まっています。

これらの新しいタイプが求められているのは、技術革新への対応力ともう一つ、激化する競争社会において、イノベーションの創出を期待されているからにほかなりません。
専門性と広い知見を兼ね備えた人材こそが、自社の事業を発展させ、成長を促すための起爆剤になると評価されているのです。

ビジネスでイノベーションを起こすためには、異なる分野の融合が必要です。
経営者においては、まずは従来のI型人材からT型人材になるような育成を行い、さらにΠ型人材へのステップを踏めるような社員教育を行うのが望ましいといえるでしょう。

AI、IoT、VRなど数十年前では考えられなかった技術・サービスが登場し、年々、技術革新のスピードは上がっています。
自社のビジネスを牽引する優秀な人材をいかに採用するか、いかに育てていくかを、専門家や幹部とも相談しながら、考えていく必要があるでしょう。


※本記事の記載内容は、2021年2月現在の法令・情報等に基づいています。

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