TFSコンサルティンググループ/TFS国際税理士法人 理事長 山崎 泰

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親として"あたりまえの国"にして引き継いでいきたい・・・医療・福祉・年金制度を考える

14.05.30 | 【バックナンバー】山崎泰の月刊メッセージ(2014年5月まで)

2013年11月15日11:32:00

 
■富士山の裾野から、一路、東京へ
 
 11月3日、富士山の裾野、富士高原で行われた東京都倫理法人会の合宿研修を正午に終え、御殿場ICから一路東京へ。
 14時から始まった母校の同窓会総会の記念講演会に、10分遅れで到着。
 例年、講演会から出席することはほとんどないのですが、今年は永井良三先生(自治医科大学学長)が「日本の医学・医学の特徴と課題」について、お話をされると聞き、医学にまったくもって門外漢なので、どうしてもこの機会を逃したくないと思い、飛んで帰ってきました。 

■すでにヒポクラテスの時代から「医術」が・・・
 
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 いつまでも健康で暮らしたい、医療の進歩で普く病気を治して欲しい・・・そんな私達の願いを叶えてくれる「医学」の力。
 永井先生のパワポを少しご紹介しながら、日本近代医学の興りまで、「医学」を遡ってみます。
 すでに紀元前、ヒポクラテスもすでに「医術」を論じていたとのこと。(図1)
 17世紀に生きたデカルトは、「哲学」全体をひとつの樹木にたとえ、「医学」の位置づけを枝のひとつであると説いています。(図2)
 1834年、実情に合わなくなった「自然哲学者」という呼称に代えて、「物質世界に関する知識の研究者」の意味で、新しく科学者(Scientist)という英語を造語。
 医学も含めた「科学」が、「哲学」から独立したのが、この時だったともいわれています。
 そして1855年、ドイツ人学者・ルドルフ・ウィルヒョーが、細胞病理学を唱えます。
 体は細胞の社会的集合であり、個々の細胞が、自立的・民主的に営む社会として生体を考え、「すべての細胞は細胞から」成り立っている・・・という、今に通じる理論の基礎が形づくられたのです。(図3)
 日本が、イギリス医学からドイツ医学へと舵を切ったのもこの頃で、東大医学部創設もまさに1858年。
 医学にまったく無知の私にとっては、まさに未知との遭遇のような知識ばかり??
 
 
■2025年には、国民医療費52兆円!? 
 
 平成25年7月25日付の厚生労働省発表によると、2012年の日本人の平均寿命は、 男性79.94歳(世界5位)、女性86.41歳(世界1位)。
 それでは、健康寿命は?
 健康寿命とは、日常生活に制限のない期間のこと。
 日本人の男性は78.42歳、女性は73.62歳。
 ということは・・・なんと男性は9年、女性は13年、何らかの病気や不自由を抱えて、人生の最晩年を過ごしていることになるのです。
 
 急速な高齢化、平均寿命―健康寿命の差に比例するかのように、医療費が急増。
 10年前は、30兆円。
 2010年、38兆円。
 最近の増加額は、毎年8,000億円~1兆円程度。
 このままいけば2025年には、なんと52兆円にまで上る予測。
 
 これから増税が予定されている消費税5%分のうち、1%分=約2兆7,000億円は社会保障費に。
 うち6,000万円が年金、1兆5,000万円が医療・介護に。
 なんとも自転車操業のような状態・・・といったら言い過ぎでしょうか。 

 
■年金もかなり心配

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~2050年には、女性の平均寿命90歳超!
 
 経年劣化し、制度疲労を起こしている公的年金制度も心配です。
 国民皆年金制度の確立は1961年。
 当時の平均寿命は男性66歳、女性71歳。
 支える世代の方が圧倒的に多い「胴上げ型」人口構造下での制度設計スタート。
 50年経った今は、男性79歳、女性86歳。3人で1人の高齢者を支える「騎馬戦型」の人口構造。 (図4)
 さらに2050年には、女性の平均寿命は90歳に達するとまで予測されているのです。まさに、ひとりで1人の高齢者を「年金という肩車」をしながら、30年近くも支え続けることが、本当にできるのでしょうか。(図5)


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私自身は、かねてから主張しているように、「個人の自立」「世代間の不公平解消」という観点からも、年金度は「世代間で支え合う仕組み」に加えて、「個人責任で自ら備える積立方式」を併用していくべきだと考えています。

 このままでは、年金のみならず日本の社会保障制度自体がもちません。

 
■日経新聞トップ「非課税の私的年金制度創設」記事にガッカリ・・・
~親として“あたりまえの国”にして引き継いでいきたい~ 
 
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11月9日付の日本経済新聞朝刊で、「非課税の私的年金創設」と一面トップで大々的に報じられていました。
 『非課税の公的年金創設』だと、まさに私の主張通りで・・・小躍りしかけたのですが、冷静に記事を読んでみると、年金制度改革という観点ではなく、金融資産を貯蓄から投資に向ける、金融分野の成長戦略の一環なので、かなりガッカリ。

 詳しくは12月号でご説明させていただきますが、この点、シンガポールにおけるCPF(Central Provident Fund)は、かなり参考になります。
 いってみれば、「政府管理による年金積立金制度」です。
 少なくとも、
 次の世代に医療・福祉・年金負担などのツケをまわさない、
 次の世代に不公平感を抱かせない、
 そんな・・・親として“あたりまえの国”にして、子供たちに引き継いでいきたいと思っています!
平成25年(2013年)11月
                            山  崎   泰  

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