桂川会計(桂川淳税理士事務所) 

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歯科医院での感染予防

14.07.06 | 業種別【歯科医業】

「読売新聞」が、歯科医院の約7割で歯科治療用の
ハンドピース(歯などを回転切削するための器具)を
患者ごとに滅菌しないで使いまわししている、
と報じたことが大きな騒ぎになっています。

確かに、私も、取材先で昼休みにハンドピースや
シリンジ(口腔内に空気を噴射する器具)が
治療椅子のラックに挿してあるまま、
という状態を見かけたことがあります。

これは逐次滅菌されていない何よりの証拠になります。

歯科業界誌編集長の手記

これまで、日本では、歯科医院の感染予防について、
医療従事者も、患者さんの側もあまり関心を
寄せてきませんでした。

歯科医師が治療中に手袋をするようになったのは、
HIV/AIDS患者が注目されてからのことで、
しかも、これは患者さんを交差感染から
守るためでは必ずしもないとも考えられます。

感染予防への関心がさらに高まったのは、
中国や東南アジアでのSARS騒ぎでした。
この時、他のアジア各国の歯科医院での感染予防レベルは
日本のレベルを超えたとされています。

では、なぜ、日本の歯科医院で感染予防が
整備されないのでしょうか。第1にはコストの問題です。

今回、槍玉に挙がったハンドピースは日本では
平均10万円以上するものです。
消毒のための器械洗浄器は数十万円、
国際基準の滅菌器(クラスBと呼ぶ)は100万円以上します。
これにグローブ、マスクなどのディスポ品代となります。

厚生労働省は、これらは歯科再診料(450円)と
外来環境加算(40円)で手当てしているとしていますが、
その金額ではコスト割れするのが現実です。

次に、歯科医院の1日当たり患者数の多さです。
診療報酬単価が低い分、同一傷病名での来院頻度が多いのが
日本の歯科医院の特徴です。

このため、頻回に滅菌しなければならず、
それには人件費、器材の磨耗という問題が伴います。

なかなか「べき論」では成立しないのも事実なのです。


【記事提供元】
月刊アポロニア21(日本歯科新聞社)
編集長:水谷惟紗久

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