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知って得する! 『キャリアアップ助成金』の改正点と加算条件

18.11.13 | ビジネス【助成金】

非正規雇用労働者のキャリアアップをはかる企業に対して助成され、助成金の主流ともなっている『キャリアアップ助成金(正社員化コース)』。
しかし、今春一部改正された制度のほか、条件により助成額を大幅に加算できることなど、詳細を知らずに利用している事業主も多いようです。 
今回は、知っておくとよりお得な、制度活用のポイントを2つご紹介します。

『賃金総額の5%以上増額』の計算と算入条件

2018年4月、『キャリアアップ助成金(正社員化コース)』支給要件の一部が改正されました。
主な改正点は、下記の通りです。

・1年度1事業所あたりの支給申請上限人数を15人から20人に拡充
・支給要件の追加
(1)正規雇用等へ転換した際、転換前の6カ月と転換後の6カ月の賃金総額を比較して5%以上増額していること 
(2)有期契約労働者からの転換の場合、対象労働者が転換前に事業主で雇用されていた期間を3年以下に限ること

特に注意が必要なのが、追加された支給要件のうち(1)の『賃金総額の5%以上増額』で、2018年4月1日以降に転換もしくは直接雇用する対象者について、転換後6カ月間の賃金を転換前6カ月間の賃金より5%以上増額させていることが必要です。
これは、派遣労働者を直接雇用する場合にも適用されます。

『賃金総額の5%以上増額』の原則の計算方法は、下記の通りです。

(転換後6カ月の賃金総額-転換前6カ月の賃金総額)÷転換前6カ月の賃金総額 ×100 (小数点以下切り捨て)≧5%

増額の計算に関しては、算定に含めることのできない手当が下記の通り定められています。

賃金5%以上増額の際に含めることのできない手当
賃金が5%以上増加していることの確認にあたっては、転換前後の賞与や諸手当を含めた賃金総額について比較しますが、

・実費補填であるもの
・毎月の状況により変動することが見込まれるため、実態として労働者の処遇が改善しているか判断できないもの

これらについては、名称を問わず賃金総額に含めることができません。
算定に含められる賞与については、就業規則等に支給時期及び、支給対象者が明記されている場合に限られることにご注意ください。

算定に含めることのできない手当の例
・就業場所までの交通費を補填する目的の『通勤手当』
・家賃等を補填する目的の『住宅手当』
・就業場所が寒冷地であることから暖房費を補填する目的の『燃料手当』
・業務に必要な工具等を購入する目的の『工具手当』
・繁閑等により支給額が変動しうる『休日手当』及び『時間外労働手当』
・毎月定額で支払われる『固定残業代』
・本人の営業成績等に応じて支払われる『歩合給』
・本人の勤務状況等に応じて支払われる『精皆勤手当』
 
上記以外の諸手当についても、その趣旨等に応じて算定から除かれる場合があります。
これらをしっかりと理解したうえで、処遇の改善に努めましょう。


助成額を最大限に? 条件による助成額の加算

『キャリアアップ助成金(正社員化コース)』に関して、もう一つ、意外に知られていない情報をご紹介します。
通常、有期契約労働者を正規雇用労働者に転換した場合、57万円の助成金が支給されますが、さまざまな条件により、下記の通り増額します。

(1)有期→正規:1人当たり57万円→72万円
(2)有期→無期:1人当たり28万5,000円→36万円
(3)無期→正規:1人当たり28万5,000円→36万円

加算申請できる条件には、下記のようなものがあります。

生産性の向上が認められる(生産性要件を満たす)場合
『生産性の向上』とは、“直近の会計年度の生産性が、その3年度前に比べて6%以上伸びていること、もしくは、その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること”と定義され、計算方法は下記の通りです。

生産性=付加価値(※)÷雇用保険被保険者数(日雇労働被保険者や短期雇用特例被保険者を除く)
※付加価値とは、企業の場合、営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課の式で算出されます。


派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者または多様な正社員として直接雇用した場合
(1)有期→正規/(3)無期→正規
1人当たり28万5,000円(生産性要件を満たす場合:36万円)

母子家庭の母等又は父子家庭の父を転換等した場合
〈若者雇用促進法に基づく認定事業主が35歳未満の者を転換等した場合〉
(1) 有期→正規
1人当たり9万5,000円(生産性要件を満たす場合:12万円)
(2)有期→無期/(3)無期→正規
1人当たり4万7,500円(生産性要件を満たす場合:6万円)

勤務地・職務限定正社員制度を新たに規定し、有期契約労働者等を該当雇用区分に転換又は直接雇用した場合
(1) 有期→正規/(3)無期→正規
1人当たり9万5,000円(生産性要件を満たす場合:12万円)

なお、キャリアアップ助成金には、正社員化コース以外のコースにも、助成の加算要件があります。
厚生労働省の案内なども参照しながら、自社の雇用状況を今一度ご確認されることをおすすめします。


出典:厚生労働省ホームページ

賃金総額の5%以上増額について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/30henkou.pdf

生産性要件について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000203893.pdf

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