森総合税理士法人・㈱森総合コンサルティング

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就業規則って何? 意外に知られていない就業規則の基礎知識

19.02.08 | ビジネス【企業法務】

働き方改革が政策としてうたわれるなか、就業規則のない会社は、労務リスクが高まると言われています。
また、労働基準法第120条により、常時雇用する従業員が10人以上の会社には就業規則の届出が義務付けられており、これを怠れば30万円以下の罰金が科されます。
そのため、適切な就業規則の策定や見直しは、すべての会社にとって急務と言えます。 
一方で、「就業規則とはどのようなものか」ということについて、正確な説明はなかなか見かけません。

そもそも就業規則とは

まず、労働契約法の第6条を見てみましょう。
『労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する』
とあり、企業と労働者の契約内容は、合意によって決まることが原則となっています。

しかし、続く第7条『本文』には次のように書いてあります。
『労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする』
ここでは、(1)合理的な就業規則を、(2)労働者に周知させていれば、労働契約の内容が、就業規則で定めた内容になる、ということです。

(1)の合理性と(2)の周知には、大切なルールがあります。
就業規則が、労働基準法などの法令より不利なものになっている場合、その部分が無効となります(労働契約法第13条)。
たとえば、就業規則で最低賃金を下回る賃金を定めても、その部分は無効となります。
そのため、通常は、労働基準法をはじめとする各法令の水準を参考にして就業規則を作成します。
そのためか、就業規則を作る時点では、(1)の合理性がそこまで問題になることはない印象です。
もちろん、リスク管理に特化したものを作ろうと思えば、文言への慎重な配慮や厳密な危険予測、プランニングが必要となります。

これに対して、(2)の周知は問題になることが多いです。
『就業規則は金庫の中にある』という経営者の方は、今すぐ就業規則を従業員の誰もが把握できるようにしてください。
ここでの周知は、『実質的』なものをいうので、『見ようと思えばいつでも見られる』という状態を言います。
就業規則を見られることをためらう経営者の方が多いですが、周知させないと、従業員が悪事を働いた場合に、懲戒処分をすることさえできなくなったり、出向を命じて断られても、どうにもならなくなるおそれがあります。


労働契約と就業規則が異なるときは?

もし、労働契約の内容と就業規則の内容が異なっていた場合には、どうしたらよいのでしょうか。
労働契約法第7条の『ただし書き』には、次のように書いてあります。

『ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない』

ここでいう第12条というのは、簡単に言えば、『就業規則より不利な労働契約内容は、就業規則の水準に統一される』ということを定めています。
要するに、就業規則より、労働契約の内容が有利な場合には、労働契約が優先されるということです。
逆に、就業規則より、労働契約の内容が不利な場合には、就業規則の内容に引き上げられるということです。

普段使っている雇用契約書と就業規則は、どのような関係にあるでしょうか。
雇用契約書の方が不利な内容となっている場合、従業員トラブルがあった時には就業規則の内容で紛争を解決することになるおそれがあります。
『昔、就業規則を作ったけれども、内容をよく理解していない』という方は、是非とも雇用契約書と見比べてみてください。


忘れられやすい就業規則ですが、今一度確認してみると、意外な発見があるかもしれません。
また、最大限会社に有利な就業規則を作成したいときは、過去のさまざまな判例等にも十分に目を通したうえで、細部に渡り検証していくことをおすすめします。

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