大阪プライム法律事務所

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5月から「令和」

19.04.01 | ニュース六法

天皇陛下が4月30日に退位され、5月1日に今の皇太子さまが新天皇に即位し、元号が平成から「令和」に変わることになりました。天皇陛下の退位日については、平成 29 年6月に「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が定められ、この法律の施行期日を「平成 31 年4月 30 日とする」旨の政令が出されました。このように、日本国憲法は、国民主権を掲げていることから、天皇の退位などはすべて国民が決めるとしているので、すべては法令で根拠が決められてきています。

さて、天皇の即位と改元との時間差について、平成改元時と今回とで違いがあるのにお気づきでしょうか。

■元号法について
この法律は、昭和54年の法律第43号として制定されました。 そこには、
1 元号は、政令で定める。
2 元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。
としたうえで、付則として、「昭和の元号は、本則第一項の規定に基づき定められたものとする。」として、昭和の元号に法的根拠を与えました。

実は、明治憲法下では旧皇室典範や登極令が元号の制定手続きを定めていました。しかし、敗戦によってGHQ(連合国軍総司令部)の統制の下で1947年にそれらの法律が廃止され、昭和という元号は、何らの法的根拠がないまま、官民を問わず元号が使用され続けてきました。しかし、元号法の制定をもって、「昭和」がその当初からに遡って元号であったとして、法的根拠を得たわけです。

 ■「平成」という元号の法的根拠について
昭和は、昭和63年1月7日午前6時33分の昭和天皇の崩御に伴って、皇室典範第4条に、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」としていて、それにもとづいて、当時の皇太子(現天皇陛下)が、直ちに(つまり崩御と同時に)新天皇に即位されました(これを「践祚(せんそ)」といいます。)。

この皇室典範の条文では直接的には書かれていませんが、皇位の継承は「天皇の崩御」のみに限定して書かれているため、天皇の生前での譲位(退位)は禁じていました。つまりは、天皇は亡くなるまで退位できなかったわけです。

そして、元号法で、「元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。」「元号は、政令で定める。」と規定していることを受けて、昭和天皇崩御当日の1月7日午後に臨時閣議が開かれて、「元号を平成に改める。」とする「元号を改める政令」が決定され、その直後に当時の小渕恵三内閣官房長官が記者会見で発表しました。その政令では、附則で「この政令は、公布の日の翌日から施行する。」としたので、崩御日の翌日になる1月8日から平成がスタートしました。

 ■天皇陛下の退位と新元号
平成28年8月8日、天皇陛下が「おことば」で退位の意向を間接的に述べたことから、国民の間で議論がされました。皇室典範には、前述したように「退位」の条項がなかったことから、その例外を認めるかどうかという議論でした。今回一代限りの退位とするか、皇室典範を改正して制度化するかが議論になりました。結局、今回限りの退位として、特例的法律となったのです。それが、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」でした。

そして、政府は昨年12月8日の閣議で、天皇陛下の退位の日にあたる特例法の施行日を「平成31年4月30日とする」政令を決定したことで、4月30日に退位され、皇太子さまが翌5月1日に即位される日程が正式に決まったのでした。

皇室典範特例法では、第1条において、この法律を定めるに至った経緯を記載したうえで、皇室典範の
特例として、「天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するとともに、天皇陛下の退位後の地位その他の退位に伴い必要となる事項を定めるものとする」として、第2条で、「天皇は、この法律の施行の日限り、退位し、皇嗣が、直ちに即位する。」という内容です。したがって、4月30日の日の経過をもって(午後12時)退位となり、翌日5月1日午前0時をもって、皇太子さまが新天皇に即位することになりました。 

元号法は、「元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。」とあり、それを受けて、昭和から平成に改元した際と同様に、「元号は、政令で定める。」と規定された元号法にもとづいて、4月1日に内閣で定める政令でもって新元号が定められ、今回、公表されたわけです。

 ■即位と改元が同時(平成のときは日が違っていた)
ただ、平成への改元にあたっては、昭和天皇の崩御を受けての作業であったことから、施行日は崩御された日の「翌日」ということになりました。皇室典範では、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」とあるので、崩御と同時に新天皇が即位(践祚)されたことから、天皇の即位(践祚)と新元号の開始とは1日の差が生じていたことになります(践祚・即位日=1月7日、改元日=1月8日)。
今回は退位日が事前に分かっていたので、即位日と改元日とは同じ日ということになりました。

■天皇誕生日の移動
余談ですが、これまでは、12月23日が天皇誕生日でしたが、今年の5月1日をもって、今後は新天皇の誕生日である2月23日に移動することになります。ただ、今年はすでに2月23日は経過しているので、今年は天皇誕生日が存在しないことになりました。まあ、新天皇陛下の即位を祝って、ゴールデンウィークでの休日が10連休になったことを考えると、これもまあいいか、という気分になるでしょうか。 

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